2007/03/27

Holiday or Sightseeing?

人生で始めて海外に出たのがロンドンへ来た時だった。

当時日本からヨーロッパへは直行便のフライトは無く、最短距離を飛んでもモスクワやアンカレッジ経由であった。
両方とも所有時間は16時間ほど掛かり、現在の直行便の11時間半に比べるとやっぱり長い飛行時間である。

自分で体験したロンドン-東京の片道最長時間は何と32時間だった。
いくら若かったとは言え、さすがに到着後はしばらく飛行機なんぞ見るのも嫌だった。

何しろ33年前と今とでは状況が色々な意味で違っている。
円が固定相場だったニクソン ショック以前の1971年までと違い、変動為替相場へ移行した73年以後、年々日本円の価値が高くなって行った。
74年当時のポンドレートは£1≒800円を超えていたし、東京からロンドンまでの航空運賃はモスクワ経由でも36万円(格安運賃など無い)もした時代である。
現在の金銭価値から言えば100万円を軽く超える金額になるだろう。

そんな訳で小生の渡航は飛行機ではなかった。
横浜からナホトカ行きの船に乗り込み、ハバロスクを経てモスクワまで列車の旅であった。その時の印象は実に強烈で真冬のハバロスクやモスクワも気温は-30℃であった。
渡英当時は色々なものが新鮮で、毎日朝から夕方までロンドン中を歩き回っていた。

ロンドンに住み始めても時々ここから海外に出かけた。
ヨーロッパ大陸は列車で国境を越えるだけで言語も文化も全く変わってしまう。
そこが面白くて旅行(この場合は観光旅行Sightseeingが主目的)によく出かけた。

何年か経った頃、英国人たちの使うホリデーに家族で参加したことがある。いわゆるパッケージ ツアーだ。
普段良く使うヒースロー空港ではなく郊外の空港だった。ロンドンにはヒースロー以外に4つの空港がある。それら空港はチャーターフライトやパッケージ ツアーの旅行客が主な利用客だ。

このツアーに参加して始めてヨーロッパ人のホリデーを体験した。
ホテルは朝食、夕食が含まれていて非常に便利だ。
ただ朝起きてから食事をすると何もする事が無い。

よく観察すると同じフライトだった英国人たちは海岸に寝そべったり、泳いだり、本を読んだりしている。昼間は近くに出かけたり、相変わらず日光浴だったり、テニスやゴルフに興ずるのが大方のスケジュールだった。

これが最低1週間続く、普通は2週間くらいのホリデーが多い。
2週間ボーッと毎日泳いだり、日光浴である。
週の中でいつでもエクスカーションと言って近隣の観光地等に出かけるバスツアーやボートツアーも別料金で行く事も出来るが。

初めのうちはどうして皆、何にもしなくて日光浴ばかりしているのだろう?と不思議だったが、そのホリデーが終わる頃になって何かリラックスした気分になってきた。

ハハーン多分これだな。ヨーロッパ人(特に北ヨーロッパ)の人達がホリデーに行く場合、実は渡り鳥と同じなんだ。
暖かいところへ行き、毎日何もしないで美味しいものを食べて日光浴!
これが目的なんだとようやく気が付いた。

日頃太陽に恵まれている日本人にはなかなか理解し難い行動である。
しかし自分もロンドンに住み始めて何年か経った頃、やたら太陽が恋しく感じた事がある。鳥や動物に限らず人間も確かに太陽の恵みを受けて生活している。その太陽の日照時間が日本に比べてロンドンや北ヨーロッパは格段に少ないのだ。だから皆、本能的に夏になると太陽のサンサンと輝く地中海地方にホリデーに出かけると言う訳だ。

このホリデーを2度3度経験してみると、確かに疲れが取れるような気がする。そしてそれ以後のホリデースタイルはそれまでの観光旅行から大きく変わってしまった。渡り鳥スタイルのホリデー型旅行が毎年のパターンになる。 すると逆に観光型の旅行は億劫になり少なくなった。

観光が嫌いな訳ではない。
しかしヨーロッパの文化はキリスト教がベースとしてあり、多くの共通点もある。一通り観光旅行に行き、まわってみると同じような観光地や協会よりも、リゾート型の旅行がありがたくなって来た。

最近マレーシアのリゾート地に観光に行った日本の友人から『ヨーロッパの年寄りが多いのに驚いた。自分もこの様な旅行をする年になった』とメールを貰った。
何のことは無い。小生は20年以上も前からこの年寄り型のホリデーがほとんどである。

太陽がいつも近くにあり、安全と水はタダ(この頃は日本もそうではなくなって来たが)の国に住んでいるとなかなかそのありがたさには気付かぬものだ。
北欧の自殺者(鬱病などが原因で)がスウェーデンやフィンランドの様な高福祉国家でも、毎年3万人前後の自殺者が有る事は、如何に太陽の恵みが人にとって精神衛生上大切か、うかがい知る事が出来るのではないか。

特に小生のようにアフリカ型人間には太陽は欠かせない。
アアッ、また太陽が必要になってきた。
今年のホリデーは地中海に浮かぶマルタ(共和国)にしようかな、確かここにも世界遺産があるらしいと、先日NHKの衛星放送でやっていたから。

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