2007/03/05

常識 その不可解なるもの

ひところ『日本の常識は世界の非常識』と言われた事がある。
その全てが非常識と言う訳ではないが、考えて見ると確かに多くの違いがあることに思い当たる。

例えば日本で美徳とされる謙譲さ、これ等はおそらく何処の国でもなかなか理解されにくい。
それどころか、意見の無い奴、優柔不断、能力不足などのレッテルを貼られかねない。
これは余りに極端な例と思われるかもしれないが、普段日本人が普通に思っていることが海外においては決して普通ではない事が間々ある。

最近は少なくなったが、インフルエンザが流行った時など多くの街行く人がマスクをしている光景がちょっと前まで見られた。これは勿論日本人の『風の菌を貰わない』『人にうつさない』と言う心理であろう。しかし、海外の事情を知らない人達には異様な風景に見えるようだ。


先ず『日本の大都会は余程空気が汚れているのか?』などと想像をするものが居る。確かに大都会は澄んだきれいな空気と言うわけではないが、これは何処も同じ様なもの、途上国の街より余程東京の方がきれいであろう。

また人によっては多くの人が顔を覆うマスクを掛けている事を不気味な国だ、と思うかもしれない。
小生など渡英した直後は街で見かけるアラブ系女性が深々と掛ける黒い布やマスクが気味悪く感じられた記憶がある。しかしイスラム文化圏では女性が街中で素顔を出す事が法律で禁じられて居る国も少なくない。

かように国による常識と、価値観は大きく異なる事を知らないと、同じ行動がとんでもない誤解を生む事も出てくるであろう。

政治家は世界的に見ても英語を話す人が多い。
しかし事外交に関する事案にはもろもろの誤解を招かない為、母国語を使う事が常識である。
仮に相当達者な人でも通訳を挟んだコミュニケーションが一般的だ。

これは随分前の話だがこちらの新聞に載ったある種の笑い話である、日本の首相の英語力をユーモラスを通り越して皮肉った内容である。

名誉の為名前は伏せるが(その人が本当に発言したか不明な為)、アメリカのクリントン元大統領が日本を公式訪問した時の顛末である。
普段余りその総理は英語が達者と言う評判は聞いたことが無い人であったが、個人的サービスのつもりでしゃべったのかもしれない。あるいは大統領到着前に外務省の役人あたりに事前に英語のレクチャーを受けたかどうかは知らないが。その時の会話の様子が報じられた。

総理: Who are you?(あなたは誰ですか?)

本来 How are you?(ご機嫌いかがですか)と言うべき所を間違えたのだろうが、アメリカ大統領を前にしての発言だけにまわりには緊張が走った。

大統領は『あなたは誰?』と聞かれたのでユーモアのつもりか,あるいは場を和ませようとしたのか

大統領: I am Hillary's husband!(ヒラリーの亭主です)

と答えたと言う。総理はレクチャーで『"I am very well thank you and you?"(有難う御座います、あなたは?)と言われると思うので、こう答えるように』と言われていたのだろう。

総理: Me too. (私もです)

と発言した と言うものであった。

事実かどうかは本人しか分からない事であるが、この様な記事が出てしまうのである。
政治家の使う言葉は基本的に母国語であるべきと言う事がこの様なジョークのネタにされるくらいなら未だ笑い話で済むが、国家の利害が絡んだ会話には余程注意が必要だと言う事なのであろう。
少々語学が得意でも政治家の先生には是非この際慎重にご発言願いたい。

また欧米のメディアは往々にしてこの様にキツイ皮肉を極東のリーダー達には向ける事も常識の範囲として知っておく必要もあるのかもしれない。日本では外国のリーダーの失言の揚げ足を取り、ましてや笑い話の種にするなど彼等の常識では考えられない事であろう。

こう考えると日本とそれ以外の国では共通点する常識などほとんど無いと考えた方が無難な気もする。

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