2007/03/11

My Idol Bill Evans

ロンドンに「ロニースコットクラブ」と言う老舗のジャズクラブがある。
ライブのJazzを聞かせるナイトクラブで、名前のとおりロニー スコットと言うテナー奏者の名前からきている。

ジャズと言っても小生の聞き方は非常に偏っていると思う。全てのジャズが好きなわけではない。
好んで聞くミュージシャンは限られている。勿論新しく好きになるミュージシャンもたまに出てくるが、大体は古い人達である。

古いと言ってもジャズの歴史は知れている。ビーボップ(1940年代)以前のデキシーやスイングと呼ばれるジャズはほとんど聞かないし、70年代以後のジャズロック、クロスオーバーと言われるジャンルも全く聞く事は無い。
つまり一口にジャズが好きと言っても、この様にほとんどのジャズ好きは自分の好みをかなり頑なに持っている。

ジャズの革命者の一人であるチャーリー パーカー以後のマイルス デイヴィス、ジョン コルトレーン ソニー ロリンズ、クリフォード ブラウン、そして多くの日本人が好きなビル エヴァンスと言った50年代から60年代に掛けての非常に短い間のジャズに偏っていると言う訳だ。

最近でこそヴォーカルもたまに聞くこともあるが、以前は全く聞かなかった。
勢いピアノ トリオ一辺倒と言う時期もあった。

特に好きだったのがビル エヴァンスだ。
日本には彼のファンがおそらく英国よりも沢山居ると思う。
彼のスタイル(繊細さ)が日本人の趣向に合うのだろう。

初めてビル エヴァンスのレコード "My foolish heart" と言う曲を聴いて、その繊細なタッチにこんなジャズピアニストが居るんだと、それ以後ビルのレコードを買いまくった。

そして73年初めて日本にやってきたビル エヴァンスのコンサートに行った。それ以後何度かチャンスはあったが何らかの理由でコンサートには行く事が出来なかった。

ニューヨークに行った時、長年の夢だったジャズクラブのメッカと言われるヴィレッジ ヴァンガードに行ったときのこと、なんと前日まで『ビル エヴァンス トリオのギグ』があったという。
何たる運の悪さよ、一日遅れじゃないか。

小生が行った日は今や伝説となった初代MJQ(モダンジャズ カルテット)がやっていた。日本のレーベルが80年代に作り出した今のMJQ(マンハッタン ジャズ クインテット)とは違いますョ!
ビル エヴァンス トリオは残念だったがMJQのグルーヴィーなミルト ジャクソンのヴァイヴを聞いて、これは又良かったなと満足してホテルに帰った事を覚えている。

この当時(80年代初期)のヴァンガードと言えば、この様なジャズ界のビッグネームが連日ギグをやっていると言った、東京やロンドンではちょっと考えられない様な豪華さであった。なにもクラブの設備や雰囲気がゴウジャスという訳ではない。入場料金もそのジャズ ジャイアンツたちの知名度からしたら、日本の何分の一であった事にも驚いた。
外車もガイタレも日本に来るとなぜそうも値上がりするのだろう?

目の前2〜3メートルの距離で聞けるジャズの生演奏、これはロンドンのロニースコットクラブの場合も同じだ。チュリップが正面を向いた時のトランペットの音圧たるや、ゴクリと生唾が出るほどである。
ドラマーで小生が好きなエルヴィン ジョーンズ(2年前に死亡)等はダイナミックなドラミングの折、その汗が飛んできても驚かない。

生演奏の醍醐味とはそんな距離(クラッシック コンサートは違うと思うが)かぶりつきでの生の音圧だろう。それをイメージして自分のオーディオをセットしているんだがなー、なかなか全ての音楽がそれと勝負できるところまでは行かない。
中には良いところまで迫るレコードもあるんだけどーッ! 生には負けると言う事にしておこう。

ビル エヴァンスで記憶に残る出来事は、80年のロニースコットクラブだ。
この時小生は手持ちのLPレコードを(それもビル エヴァンスのものばかり)10数枚を持って出かけた(重かった)。 生憎席は余り良い場所ではなかったが、最初のステージが終わった後に楽屋を尋ねた。

中に招き入れてくれたビルは彼の音楽と同様、非常に繊細そうな印象だった。以前に同じ楽屋で会ったアートペッパー(アルト奏者)が刺青の入った腕で、陽気にしゃべりながらサインをしてくれたのと対照的だった。
一枚一枚のレコードをコメントを加えて、その時の思い出を話しながらサインする姿は、まるで彼の音そのものと言う感じだった。

今でこそロニースコットのステージにはスタンウェーのグランド ピアノが使われているが、当時のステージはヤマハのグランドピアノだった。
彼のピアノに対するコメントは(小生が日本人だったので)日本のピアノならばどちらかと言えばカワイの音が気に入っている。(ヤマハに勤めている人ごめんネ、小生のコメントではありません)と言うことだった。あの一音にこだわるビルのテーストを尊重して、何年か後に我が子供たちがピアノを習い始めた時に買ったピアノはカワイだった。

全てのアルバムにコメントとサインをしてくれたビルに握手をして、次は『来月の東京コンサートで会おう』と楽屋を出た。その2週間後アメリカに帰ったビル エヴァンスは帰らぬ人となってしまった。
その時のロニースコットクラブでのギグは残されていないが、彼が亡くなってから発売されたレコードやCDは何枚か買って聞いてみた。

ミュージシャンの素晴らしさはクラッシックやジャズその他のジャンルを問わず記録媒体(LPやCD)に残された音楽が、たとえ本人がこの世に居なくなっても、何十年でも人々に感動を与え続けられると言う事ではないかと思う。

4 件のコメント:

  1. 合宿の記事、読ませて頂きました。写真も一つ一つ、画面一杯にして見させて頂き、皆さんの真摯な姿が伝わって来まして、背筋がピンと伸びる・・・そんな感じになりました。少林寺拳法を通して、国と国、人と人が交流出来る事の大きさを思いました。こうして実現出来るまでの過程を思う時、そこに賭けたミズノさんの情熱と努力を、改めて凄いな~と思いました。そう言いますと、ミズノさんは、そんな事、ないですよ・・・と言いそうですが、ホント、そう思いました。秋、今度は日本での交流の場があるそうですね。楽しみにしています。

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  2. yamamotoさん
    早速のコメント有難う御座いました。
    少林寺拳法をやっている拳士は英国、日本を問わずまじめだと思います。
    中でも学生は特に純粋です、そんな彼等に
    将来の夢を託したいと期待を持って指導しています。
    少林寺拳法で仲良くなった仲間が世界中に増えれば、それぞれの国が(仲間の為にも)戦争と言う状況を作らない様に努力してくれるのではないかと思うのは短絡的過ぎるでしょうか。
    少林寺拳法に限った事ではなく、お互いに信頼や尊敬できる友人が居る国と戦争したいと思う人間は少ないと思うからです。
    又コメントを期待しています。

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  3. 本日夕食をご馳走になり、いそいそと自宅に帰り早速ブログを拝見しました。先生のご趣味は多彩さに、たいへん興味深く読ませていただきました。いつか将来先生とジャズ談義ができるようになるため、勉強させていただきます。今後ともよろしくお願いします。

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  4. P-roshi さん

    早速の書き込みありがとうございます。 このブログは趣味を含め小生の独断と偏見で書いておりますので、P-roshiさんの考えと違ったときには遠慮なくコメントしてください。
    また近々ゆっくり音でも聞きながら話しましょう、ともあれMrs.Rの試験合格はうれしいニュースでした。

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