2020/07/02

少林寺拳法とBlack Lives Matterについて

5月25日 アメリカはミネアポリスにおいて黒人のジョージ・フロイド氏への白人の警察官による過剰な逮捕映像が世界中に拡散されることになり、その事が人種差別によって引き起こされた事件との非難の声が上がる事となった。

その後 該当の警察官は殺人罪で逮捕され起訴されることになったが、同時にその場にいた3名の警察官も解雇され訴訟が起こされているようである。この事件はその後アメリカ大統領のSNS等の投稿が切り取られて表沙汰になることで、益々その問題の根深さが改めて市民の間で話題になっていることは多くを語るまでもない。これはアメリカ社会のみならず世界中の至るところで人種差別に反対するデモが Black Lives Matterとして取り上げられている事をテレビニュースからもうかがうことができる。

アメリカの都市のみならず、イギリスは元よりヨーロッパの多くの街や日本においてもBlack Lives Matterのデモは起きている。私が住んでいるイギリスでも奴隷貿易に関わった当時の貴族や貿易商人の銅像がデモの群衆により倒されたりするニュースが登場している。

日本ではこれまで比較的 人種差別による社会問題は起きた事は記憶に無いが、欧米には一時期において植民地政策がとられ、その事により奴隷貿易や砂糖、紅茶等の取引で巨万の富を築いた人達がいることは歴史上の事実である。

その様な中でBSKF(英国少林寺拳法連盟)は連盟としてBlack Lives Matterを支持する事を表明した。もちろん私にも連盟理事からそれらの決定に至る経緯の説明があったことは言うまでもない。その時 私が彼らに伝えたことは『私も個人的に理念には賛同する』だが同時に『偏ったプロパガンダや過激な組織に乗せられたりしないように』という二つの事である。

自分の人生でも経験した1960年の日米安保条約反対と、学生だった70年の大きな出来事を今でも記憶している。当時の私はそれらのデモに参加した事はなかったが、殆どのキャンパスには立て看板が立ち並び、連日のように学生達によるデモやアジテーションが繰り返されていた。現在ではその様な過激なデモは想像もできないであろうが、当時の日本で現実に起きていた事は紛れもない事実である。

開祖は『若者は純粋でエネルギーは有るが、時に物事の本質を見失う』と言う事を指摘されていた。 当時の自分は毎日が少林寺拳法で明け暮れていたノンポリ(Non Politicsの略、死語だね)の代表格で政治には全く興味がない(知識不足の)学生であった為、その様なデモ行進に参加することも無かった。

ある時 本部での指導者講習会で開祖の法話にそれが話題に上がった。全学連と呼ばれていた当時の安保条約反対のデモを組織していた学生団体について、『誰によって資金が提供されていたか』と言う裏話を披露された事がある。開祖の話では共産党の思想を理想として掲げる全学連に裏で資金を提供していたのは『アメリカのCIAである』と言うショッキングな内容であった。誰もが最初は『まさかその様なバカな事が』という反応だった。どこで仕入れた情報かは言われなかったが、その時の記憶では『安易に信念もなくその様なデモに加わってはいけない』と言う内容であった様に記憶している。しばらくして諸々の情報が明らかにされる時代になり、開祖の話が根拠のない作り話では無かったと言うことが理解できた。

翻って今回のBlack Lives Matter問題は日本国内で生活する人達や拳士には中々理解できない事なのかも知れない。少林寺拳法が掲げる『理想境建設』や『半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを』を挙げるまでもなく、社会正義に反する犯罪や差別には声を上げる事は大切な時ではないかと思う。日本の協調社会は世界でも例を見ない程に羨ましい国であることは多くの例が示している。ただ同時に行き過ぎた協調(同調)で他人の評価や眼差しを意識しすぎて行動に移せない人が多い事もまたその特徴かも知れない。

開祖が我々に伝えたかったのは『自己確立』、『良いと思ったら先ず行動せよ』と言う事ではなかったのか? 欧米社会には確かに日本より大きな人種に対する偏見や差別は存在する。私自身も英国における生活の中で経験もしたし目撃もした。故にBlack Lives Matterは黒人社会のみならずあらゆる人種に対する差別と社会正義の必要なことを我々に突き付けているのではなかろうか。であるならば私は今回のBSKF理事会には賛成である。人種差別に乗じた破壊活動や略奪などは全くの論外であることは言うまでもない。

支部長がんばれ!拳士がんばれ!『良い社会は君達の双肩にかかっている!』



以下にBSKF理事会が出したコメントを掲載しておきます。

Gassho We hope you are all staying safe and well.

The BSKF has rarely spoken out publicly on political matters. However we feel it is important to directly address recent events, as they have no doubt had an impact on all of us.

"I can't breathe"

On 25th May, George Floyd, an unarmed black man, was killed by a former Minneapolis police officer during arrest. The officer has since been charged with murder. His death and last words have become a catalyst for renewed momentum behind the Black Lives Matter movement around the world, and led to much needed dialogue and introspection on the subjects of race, discrimination and privilege.

The BSKF supports Black Lives Matter. We aim to be an inclusive organisation that welcomes everyone regardless of gender identity, race, background, ability or sexual orientation. We have always and will continue to stand against discrimination in all its forms. However if current events have taught us anything, its that it's not enough to simply take an inclusive standpoint. We all need to actively seek to understand, challenge and change bias, privilege and prejudices at personal and institutional levels. Shorinji Kempo's philosophy is one of personal responsibility and positive action, of self-awareness and respect for others. Equally the BSKF's leaders and branch masters are constitutionally bound to challenge discrimination or discriminatory behaviour within our organisation, wherever it may exist. As an organisation and as leaders we can always do better. We would also encourage all of our members to reflect on these events, and reflect on our philosophy, and ask yourselves what you can do differently too.

If any of our members have been affected by recent events and would like to talk, have feedback for us on what we can do to better address diversity and inclusion within our organisation, or have experienced discrimination within your own dojo, we encourage you to get in touch. You can talk confidentially to the directors (Kat, Ben and Michal), speak to your branch master, or message us via the BSKF website.


以下 Google翻訳

BSKFが政治問題について公に発表することはほとんどありません。しかし、最近の出来事は私たち全員に影響を与えたことは間違いないため、直接対処することが重要だと感じています。

「息ができない」

5月25日、武装していない黒人のGeorge Floydがミネアポリスの元警察官によって逮捕されました。その警官はその後殺人罪で起訴された。彼の死と最後の言葉は、世界中のBlack Lives Matter運動の背後にある新たな勢いのきっかけとなり、人種、差別、特権についての必要な対話と内省につながっています。

BSKFはBlack Lives Matterをサポートしています。私たちは、性同一性、人種、経歴、能力、性的指向に関係なく、すべての人を歓迎する包括的な組織を目指しています。私たちは常に、そしてあらゆる形態の差別に立ち向かい続けます。しかし、現在の出来事が私たちに何かを教えてくれたなら、それは単に包括的な立場を取るだけでは不十分です。私たちは皆、個人的および組織的なレベルでバイアス、特権、および偏見を積極的に理解し、挑戦し、変更することを求める必要があります。少林寺拳法の哲学は、個人の責任と前向きな行動、自己認識と他者への尊重の一つです。同様に、BSKFのリーダーと支部長は、存在する場所にかかわらず、組織内で差別または差別的行動に異議を唱えることが連盟規約上 義務付けられています。組織として、またリーダーとして、私たちは常により良いことをすることができます。また、すべてのメンバーにこれらの出来事を振り返り、私たちの哲学を振り返り、自分に何が違うのかを自問することをお勧めします。