2015/12/11

ゼロからの出発

先に紹介したIKA(国際拳法協会)の初めての試み、日本セミナーは大変好評であった。主催者自らが言う評価は別としても、参加して頂いた日本の指導者達がどの様に感じたのかは私自身にも大いに関心がある。そして又この様な講習会を取り仕切って成功に導いた日本護身拳法連盟の指導者は、単なる趣味を超越した情熱が随所に感じられ永年同じ道を共に歩いてきた者として大いに共感を覚えた。

BSKF(英国連盟)の拳士
かつては少林寺と言う大きな組織に所属して、共に教えを広める事に喜びを感じ頑張ってきた指導者達である。 その様な熱心な拳法指導者達が何故それまでの組織を飛び出し、新しい組織を立ち上げたのであろうか。 現在も大きな組織に属している人達からすれば裏切り行為の様に思われるかも知れない。しかし彼等は望んでその様な行動をとった訳では断じて無い。やむにやまれぬ気持ちでそれまでの活動に区切りを付け、何とか自分達の目指してきた教えを後進に伝えて行きたいと願う強い思いから、立ち上がったと言うのが現実の姿ではなかろうか。

「その様な事は組織内でやるべきである」と言う人達も居るであろう。そう信じる人達はその様にすれば良いと思う。昨今の組織の衰退が彼等によってもたらされた訳でも無い! ほとんどの指導者は気が付いて居る事であろう。気が付いては居てもそれを公に口に出して言えない事を多くの人達が指摘して居る。かつては何十人も拳士が居て活気に満ち溢れていた道院が、10名にも満たない拳士しか集まらない状態になってしまった事を何と説明できるであろう。

日本護身拳法連盟を立ち上げた指導者達には、現状を変える以外に方法が無かったのではないか。もしそこにより優れたアイデアが組織から示されて居れば、彼等はあえて別の組織を立ち上げる必要など無かったはずである。組織が言う名称『少林寺拳法』だけを守って居ても、人が集まらない事は随分前から実証されている。問題はその様な現実を前にしてどの様に行動が出来るのか? 私は現在日本護身拳法連盟の相談役と言う立場になっては居るが、英国ではBritish Shorinji Kempo Federation(英国少林寺拳法連盟)の責任者でもある。その様な立ち位置の私から見ても、日本護身拳法連盟の指導者達はより宗道臣の教えに忠実な人達に見えてしまうから不思議である。

『自己確立』と言う言葉を何度も耳にした。しかし本当の意味で自己確立が出来た人は日本護身拳法連盟の指導者として独立した先生達ではないだろうか。大きな組織から独立し色々な批判も覚悟の上で、自分達の信じる道をゼロから追及しようと言う事は並大抵の決心では出来ないと思う。それでも立ち上がる事を決意した人達に誰が批判できようか。もしそれでも批判を口にする人が居れば「自分の心に照らして恥ずかしく無いですか?」と聞いてみたい。

イタリア、チェコの拳士
日本護身拳法連盟の指導者達は今非常に燃えている、少林寺と言う組織の束縛から解き放たれた自由と、やる気に満ちた姿勢には彼等が成さんとする思いが言葉の一つ一つから感じられる。この清々しさは何処から来るのであろうか? 不満をぶつけ合うのではなく、自分達の信念を貫き、護身拳法と言う新しい道に希望も情熱もささげられると言う喜びが、10月のセミナーでも感じられた。今回の第一回IKAジャパン・セミナーの成功が、大きな自信につながったのであればそれ以上の喜びは無い。

『人は一旦決意すると強いな』と言う事を、私も彼等の言葉や行動から学んだ。そうは言っても全く新しい組織を発展させて行く事は傍で言うほど簡単では無い。何処の世界でも同じであろうが、とりわけ武道の数が多い日本では新しい武道を目指す事が簡単であるはずも無い。しかしながらそこには共に信頼できる仲間と、共通の夢を語れる拳士が居る。希望の無い組織から解き放たれた彼等が、これからどの様に思い描く理想の武道を追及して行くのか、私も一緒に見守って行きたいと願っている。

まもなく年が改まる。来るべき新しい年がこのブログにお付き合い頂いた方々、そして投稿頂いた皆様にとって、希望に満ちた素晴らしい一年となるよう願ってやまない。
2016年も宜しくお願い申し上げます。

BSKF 水野  結手