2007/05/27

成熟した車製造国日本 ~その2~

学生の時友人でスカイラインGTRに乗っている奴がいた。

当時サニーやカローラが60万円台で買えた時代に180万円もした車である。メカニカル ノイズがもの凄くその車が来るとかなり離れていても直ぐ分かったほどである。今ではレース界で伝説となったそのスカイラインGTRの50連勝が始まった当時のことである。

自分はと言えば日産サニーを親から買ってもらい、それで鈴鹿サーキットに良くレースを見に出かけた。当時のレースでのGTRは圧巻だった。鈴鹿の最終コーナーで観戦していると甲高いGTR独特のエキゾースト音が先に聞こえてくる。

車が現れると運転している高橋、黒澤、北野といった日産のワークス ドライバーが片手運転でカウンター ステアをあてながら出てくる、『すごいなー!』というのがその時の印象だったが、現在のグランプリドライバーであるアロンソやライコネンに感嘆する若者と同じ様なものだったのかもしれない。

そんな自分が卒業後就職して最初に買った車がフェアーレディーZだった。
新車を受け取り親父に見せると『二人しか乗れないのか?』と言うのが最初の感想だった。当時日本社会での車に対する価値観はおそらくこの親父の言葉が象徴するようにスポーツカー等はまだまだ肩身の狭い存在であったように思う。


今では世界中で日本車の優れた性能は認められ、世界で最も売れる車を製造する国となった。それでは日本人の車に対する認識はどう変わったのであろうか? 

ミニバンを改良して作った7人乗りのMPVなどが一時期随分と流行った。小生もアウディの大きめなセダンに乗っているので時々思う事がある。

5人乗りの車でもほとんどの場合(8〜9割)が一人で乗っている訳である。他の4座を使わないのならスマートのような2座席か、スポーツカーの2座席の方がより効率的ではないのか? もし何人も乗る事になれば、その時レンタカーでも借りた方が良いのではないか?と。

万が一の利便性を考えて5人乗りのセダンや7人乗りのMPVやSUVを買うと言う事は、あれから35年以上も経つのに日本人の車に対する価値観はあまり変わっていないのではと思うがどうであろう。

ガソリンエンジンの車と言うものが人に使われ始めて120年経ち、地球温暖化も話題になり、その影響か日本の作るハイブリット車はこのところ日本車のイメージ向上に大きく役立っている。

しかし本質的な意味で環境負荷を考える時ハイブリッド車に使われるハイテック技術が、必ずしもこれまでのガソリン車やディーゼル車よりはるかに優れた環境技術であるかどうかはいま少し時間が必要であろう。

くしくも日本のメーカーにおされ気味の欧米の車メーカーもハイブリッド技術を日本から買ったり又新しく開発研究を急いでいる。これは単にビジネスでこれ以上日本に立ち遅れると負けてしまうからとりあえずハイブリッド車も作ろうとしている訳で、本当の意味で地球の温暖化対策や環境問題を考えてのハイブリッド化とは違うように思えてならない。

アフリカを講習会の都度訪れ、その地域で古い日本車が元気で?走り回っている様子は日本人として誇らしく感じたものだが、良く考えて見ると2月にこの欄でも誰かが指摘されたとおり、日本で使えなくなった古い車の処理場(墓場)としてそれらの国に中古車を輸出していると考えられなくも無い。

そうであれば今後出てくるより環境負荷の高いハイブリッド車(バッテリー等)がこれらの途上国に輸出される事も時間の問題であろう。そうなった時我々はこれまでと同様に中古車を輸出し続けても良いのであろうか。『日本が輸出しなくても他の国が輸出するではないか』、と言う意見も当然ある事と思う。

しかし現在の最先端技術を自負する車の製造国、日本の先進国としての責任は、それらの技術が輸出された国でどのように最終処理をされるかを無視して輸出されるとしたら、将来に環境汚染やその被害者が出たときには、それに対する賠償や責任が日本に突きつけられる事になるのではないかと危惧するところである。

2 件のコメント:

  1. 先日は両陛下のレセプションへのご列席、まことにおめでとうございました。
    私にとっては正に雲の上のお話、ご帰国の折にお聞かせいただけるのを楽しみにしております。

    クルマの流行のお話、納得してしまいました。日本ではメーカーの誘導もあってか、時代とともに、セダン→デートカー(?)→ハッチバック→4x4→ミニバンと、次々と流行が移ってきましたね。今はご指摘のように「環境にやさしいクルマ」を各社とも喧伝しています。
    が、環境にやさしくするにはクルマに乗らないのが一番いいわけで、ついにメーカーも自己矛盾に陥りかけているのでは?と思います。
    私の職場などでも、最近クルマを持たない若者が増えています。クルマが必需品ではなくなってきているのかもしれませんね。

    トヨタの渡辺社長は、これからトヨタは「乗れば乗るほど空気がきれいになるクルマ」「人を傷つけないクルマ」「乗れば乗るほど健康になるクルマ」の開発を目指すとしています。これって、いかにクルマが社会悪を生み出しているかということの裏返しのような気がします。
    むしろ、日常の移動手段は公共交通に徹し、楽しみとしてのクルマのあり方をもう一度見つめなおしたほうがいいのかもしれませんね。(英国は当分公共交通に頼るのは無理かもしれませんが…)
    長文、失礼しました。

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  2. Go さんへ
    建設的なメッセージ有難う御座います。人間の持つ性(サガ)の一つが、一度快適さを手に入れた者はそれ以前の状態に戻る事が並大抵の努力では出来ないと言う事でしょう。 頭では誰も環境に良くない事をしたいとは思いませんが、そうかと言って現代の快適なライフ スタイルを江戸時代に戻せるはずもありません。
    人が霊長類最高の生き物と自負するのであれば、それ以外の生き物を含めた環境保全の為に、どの様な技術を生み出せるかと言うメンタリティが問われている時代だと思います。これからもメッセージ性の強いコメントを期待しています。

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