2007/07/07

The Way of the Warrior

1982年ごろBBC(英国の公共放送)のプロデュウサーから武道シリーズのドキュメンタリーを撮りたいので協力願えないかと相談があった。

ブルース リーのブームも一息ついた当時BBCのプロデューサーから『武道のルーツをインドから中国そして日本での発展までをドキュメンタリーとしてシリーズで紹介したい。ついては少林寺拳法も撮りたいので協力を願えないか』との依頼であった。早速WSKO本部に紹介して取材の協力を取り付けた。

取材は2年以上にもおよび、少林寺拳法以外にもインドの"カラリパイト" 台湾の"武術(ウーシュウ) "韓国の"テコンドウ" そして沖縄の"剛柔流空手" 日本本土からは"居合い道" "合気道"もシリーズとして取り上げられた。

取材陣はとりわけ少林寺拳法に良い印象を持ったようで、ほぼ一年を掛けて本部から全国大会までを満遍なく収録してきた。プロデュサーはもとよりダイレクターも少林寺拳法が最高の印象だったと英国に帰国後わざわざ小生に連絡してきた。『武道の持つ技術と哲学の指導と言う集大成を少林寺が武道専門学校として理想的な形で行っており、それを最後のシリーズで放映したい』と言うほどの熱の入れようだった。

我々も彼等(BBCの関係者)の説明とその満足度から放映されるシリーズに大きな期待を抱いていた。しかし実際に始まったこの武道シリーズ"The Way of the Warrior"は我々の期待を大きく裏切るものとなった。

当初聞いていたこのシリーズの最終回に紹介されるはずの少林寺拳法が、未だ多くの視聴者が注目をする前の第一回シリーズに放映されたからである。内容もプロデューサーが話していた感激した内容と随分かけ離れた事が紹介され、部分的には少林寺拳法のイメージを結果的に悪くする様な内容も含まれていた。早速WSKO本部と英国連盟から正式なクレームが出された事は云うまでも無い。

何故この様な結果になってしまったか?
83年当時、小生の弟子で初段を取った拳士で別派に走った者が居た。困ったことに彼は当時の英国に於ける武道統括団体"マーシャル アーツ コミッション"で事務局長と云う立場にあった。

BBCも当然ここを通して我々に依頼してきた訳であるが、タイミング悪く別派問題のこの男が破門と言う状態のときに放映が始まることになってしまった。そしてBBCがマーシャール アーツ コミッションに少林寺拳法の解説を求めたところ、その事務局長だったこの男が引き受けてしまった。

もちろん編集の段階で何度もプロデューサーに最終段階のものを放映前に見せてくれるように依頼していたが、何だかんだと理由をつけて実現しなかった。破門になった元拳士のコメントを引用したナレーションが少林寺拳法に好意的なコメントをするはずが無い。拳法シリーズを一変させたことは明らかである。最終回で紹介されると聞かされていた少林寺拳法が最初に出てくるのだから驚いたが、その内容にはもっと驚く結果となった。

それでも内容として、今は亡き板東先生の活法が出てきた。
放送後、見事に一撃で気絶させてしまう技を見た空手家の指導者から『すごい技を見せる師範がいるねェ。少林寺はすごい!』と電話を貰った。あのシーンだけはおそらくどの武道をやっている者でも驚いた事だろう。板東先生の技は絞め技もあり、わずか数秒で羽交い絞めで落して(気絶)しまうところも出てきた。

その後の映像に出てきた活法は小生も指導頂いた事があるが、完全にのびて(気絶)しまった人間を生き返らせる活法は少林寺拳法を修練する拳士にとって真剣に習得しなければならない技術であろう。この技を勉強しなくて不殺活人(勿論気絶した人間を起こす事のみに使う言葉で無いが)は成り立たない。

素晴らしい技が習えるのに突や蹴、そして柔法の技のみに目が行っているとすれば随分もったいない気がする。

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