2007/04/23

フィッシュ&チップスと英国料理

ロンドンに来た日本人から「美味しい英国料理は何か」と聞かれるが、こう質問された日本人ははたと困ってしまう。ローストビーフ、他に何があったかな? と考えながら『フィッシュ&チップス』と答えるであろうか。

ローストビーフも確かに家庭で時間をかけて焼かれたものは美味しい。しかしこれとて日本人の口に(特に来たばかりの人)美味しいかと聞かれると考え込んでしまう。

グレイビィ(ソース)以外に塩と胡椒、そしてヨークシャー プディングと言う今でも説明に困る物が付いている。ところによってはジャムを肉に付けて食べるところもある。これなどは日本人はもとより、他のヨーロッパ人にも驚きのようだ。

翻って日本の料理はこのところ世界の先進国では至るところで見かけるようになった。

ロンドンでも日本料理もどきを含めると200を超えるレストランがある。その中で伝統的(正統)なものは数えるほどしかないが、中にはとてもこれが日本料理とは認められないものも随分含まれている。そのほとんどが日本人以外の経営者である。
一見、日本レストランのような感じを出しているが良く見るとどこかおかしいことに気が付く。メニューの名前や字がでたらめだったり、ひどいのになると日本料理と中華料理の区別が付かないものや、韓国料理や全てミックスでも名前は日本料理店と言う所もある。

アフリカ講習会の折ナイロビに有る日本料理店に入った事がある。
店に入ると『いらっしゃいませ』と声が掛かった。中には多くの日本人客がいた。雰囲気が何処と無く変わっていて、良く見ると絣の着物を着た現地の女性が注文を取りに来た。店の奥ではやはり現地の料理人がテンプラなどを揚げている。味は確かに日本料理で、経営者は日本人だった。

この様に観察すると経営者が日本人以外の店は往々にして"もどき店"が多い。
自分が来た頃のロンドンには数えるほどの日本料理店しかなかった。又その様なレストランで食事をする機会もほとんど無かったが、たまに入ると確かに経営者は日本人と言っても、とても店で出すような料理ではない処も確かにあった。この場合は素人料理と言った方が適当かもしれない。

時代が変わり、日本人も70年代中頃の4,000人(在留届けした人数)から現在では50,000人をはるかに超えたと聞く。そんな状況を見るに日本料理店が多くなっても不思議ではない。又アメリカなどの日本料理導入の先進国等から日本料理は健康志向というイメージが入ってきた事も日本料理の普及に貢献している事だろう。

ところで日本人に不評の"もどき店"も日本人以外には結構好評のようだ。
実際に日本料理を食べた事の無い人達には雰囲気が日本料理と思わせるのであろうか?彼等に、実際に伝統料理の刺身を食べさせて"もどき店"で示した満足を得ることが出来るかと聞いても、おそらく“No”だと思う。なぜなら彼等は雰囲気に満足して「日本料理を食べた」と思っているわけで、本物の味が旨いとかそうでないとかの区別が出来るとは考えられないからである。

では元に戻って英国料理はどうか。
ロンドンに住み始めた当時は良くフィッシュ&チップスを食べた。合宿などでも昼食に毎日食べた事もある。当初はそれでも旨いと思って食べていたように思う。只イギリス人達が食べるようにモルトヴィネガー(酢)をチップスと魚のフライにかけ塩を振りかけた食べ方だけはどうしても出来なかった。我が家の子供たちは勿論ロンドンで生まれ育った事から全く英国式の食べ方が旨いようである。

英国料理と名の付く物が少ない代わりにロンドンには世界中の食材とレストランがある。
おそらくその種類の多さでは東京よりも余程多い事であろう。それはロンドンに住む外国人の種類が東京とは比べ物にならないくらい多いからであろう。そこに住む人達により料理も文化の一環として取り入れられている。そのお陰で色々な国の料理を味わう事が可能と言うわけだ。

料理は何処の国でも重要な文化である。単に口に合わないと言ってもそれはその人個人によるものであり別の人には旨い事も確かである。もし色々な国の文化を理解しようと思うのならば自分の好みの味を先ず無にして、好奇心で味わって見たらどうであろう。思ったよりも色々な国の味になじむ事が出来ると思う。自分の感覚だけが正しいと信じて、いつもそれを基準に他国の料理を判断していたら何を食べても難しいような気がする。

日本には確かに美味しいものは沢山ある(特に我々日本人にとっては)、しかし同じ様に他の国も、その国の人達にとっては何処の国よりも自分の国の食べ物が一番旨いと言うことも真実であろう。

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