2007/02/22

テニスについて

ゴルフをやめて少し経った頃、弟子の拳士でテニスクラブに入っている者がいた。
あるとき『先生テニスしませんか?』と言うので『やった事は無いが興味はある』と答えると、自分が所属しているテニスクラブへ来ないかと誘ってくれた。

そこはローンテニスクラブ(天然芝のコートばかりのテニスクラブ)でビジターとして呼んでくれたわけである。2時間ほどテニスボールを追い掛け回していたが、学生時代、あれは女子がやる軟弱スポーツだ!と見下していた自分がフウフウ言ってボールを追いかけてみて、このスポーツこそ今始めるべきだと手のひらを返すのだからこれほどいい加減なモチベーションも無い。

ゴルフの時もそうだったが、一定のレベルに達していないとそのテニスクラブもメンバーになれなかった。
テニス初心者の小生は初めアダルト インストチュート(成人学級)にビギナーズクラスがあることを見つけ1ヶ月のコースに参加した。
皆同じようなビギナーズばかりだったが日本人は当然自分一人だった。
コーチの指導で説明の後(解からない部分もあったが)デモンストレーションの相手をさせられて一番ボールを打たせて貰った事で浮かれていた。

テニスもゴルフと同じくシーズンのピークがあるスポーツだ。5月頃から沢山の人がテニスを始めるがウインブルドンが終わると、それの前と後ではコートでプレーする人の数がはっきりと異なる。

それでも小生は何とかウインブルドン以後もテニスを続けていた。
ビギナーズコースでしか教えてもらえなかった事からそれ以上の進歩は難しかった。
そこで弟子のローンテニスクラブで教えているプロのコーチの指導を受ける事にした。
今度は1対1のプライベートレッスンを受けたのだ。

約束の時間コートに現れたのは初老の老人だった。しかも足が悪いようである。
この人がテニスの様な激しく動き回るスポーツをはたして教えられるのか。これは失敗かな?と思い始めていた。
小生の前に1時間、15歳くらいの女の子を教えているのを見学したが、その時走る事の出来ないそのコーチは言葉で色々支持を出して指導していた。

小生の番になった。
先ず初めにサーブの練習を指示された、強く打ったボールはネットに当ったり、時々はまぐれで上手く入ったりしたが全く形になっていなかったのだろう。
その時の小生のサーブのイメージはジョン マッケンローだった。彼がするようにテレビで見た胸を反らせ反動で飛び上がってサーブを打つ。

『体を真直ぐにしてトスを上げなさい』(胸をそらすな)とコーチが言った。
それじゃーマッケンローみたいなサーブは出来ないじゃないか。と胸の中で呟いていたが、言われたとおりにすると不思議と良くサーブが入るようになった。
やっぱり基礎にかなった方法で練習すれば上達は早いなァ、と初日のレッスンが終わる頃には関心している自分の姿があった。

毎週1回のレッスンだったが、おかげで1ヶ月後に行われたテニスクラブの試験に何とか合格してメンバーとなった。
テニスクラブに入って分かった事は、年に何度か試合があり、それで勝ってよい成績を収めてクラブの評判を高めたいという思惑があるということで、その為にビギナーはあまり歓迎されない。
小生の場合運良くかなり上手いメンバーが拳法の弟子に居た事である。

ウインブルドン前には何処のテニスクラブもクラブメンバー全員にティケットの割り当てがある。それを何とか売らなければならない。小生の場合メンバーになってから日が浅かった為5枚ほどでよかったが、当然の事ながら良いゲーム(センターコート決勝等)のティケットは端から回ってこない。

自分の足でウインブルドンへ行ったのは丁度ビヨン ボーグが負けて引退した年が最後だった。その前に2度ほど見に行ったが有名選手のコートは何処も満席で、これならテレビ観戦の方が良く見えていいなと感じた事を覚えている。

テニスもその後余り長く続けられなかったが、その初めに受けた足の不自由なコーチからの指導で学んだ事はその後の少林寺拳法の指導に大きな教訓となった。

『生徒をよく観察する(どんな指導が必要かを見つける)』
『的確な言葉で理論を説明する』
『正確な基本を先ずビギナーには教える』

勿論言葉が足りない(基本的語学力の問題で)小生の場合、拳法の指導には見本を何度でもやって見せる が必要だったが。これはどんなスポーツでも同じではないかと思う。

言葉で納得させられるように明瞭に説明する。
セオリーが正しければ誰もが上達する。
これらの事はテニスを続けなくなったそれ以後も決して忘れる事のない教訓として心に残っている。

2 件のコメント:

  1. イギリスで少林寺拳法をした時に、一番最初に驚いたのは、ロジックな説明でした。
    英語と日本語という言語的な違いからくるものかもしれませんが、それまで日本の大学支部で練習していた際は、指示代名詞や擬音語を使った説明が多かったためです。
    それからはずっと、できるだけ擬音を使わない説明を心がけていますが、未だに、その相手にピタリとハマるような語彙と文章の組み立てに苦労する日々が続いています。
    日本語は難しいですね。

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  2. Chun君いつも丁寧なコメント有難う。
    人に物事を伝える手段として言葉は大切ですが、その言葉が伝えられる限界も多くの例ではっきりしています。
    日本で働いていた頃、1週間の合宿(会社主催のコミュニケーションと言う主題)に参加しました。
    その時同じ日本人同士でも自分の意思を正確に相手に伝える事が如何に難しいかと言う事を学習しました。
    渡英して最初に困った事はコミュニケーションの難しさでした。
    そんな訳で小生が初期の頃に出会ったゴルフやテニスのインストラクター達の指導法はその後の小生の少林寺拳法指導にも大きな参考になった事は確かです。

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