2007/02/08

独断と偏見で車社会を見る

日本の交通システムはイギリスを手本にしたのだろうか?。
注意深く観察すると、両国の車に対するとらえ方(交通システムを含む)が随分違う事に気が付く。

先ず両国とも車は右ハンドル(左側通行)である。
これは他のヨーロッパ諸国や南北アメリカをはじめ、旧英連邦を除くほとんどの国とは逆である。日本は旧英連邦(植民地)ではなかったが、同じ交通システムをとっている国である。
アフリカやオーストラリア、アジアの英国を宗主国とした国々も同じシステムであるから思ったより右ハンドルの車を使う国は多い。

日本人が外車に抱くイメージは圧倒的に「左ハンドル」である。
どうかすると右ハンドルの国「英国」で製造されたジャグアーや、ロールス、アストンマーティン等も日本では「左ハンドル」なのを見かけることが何度もあった。日本へ行く都度見かける外車の左ハンドル車の多さに驚きながら、さぞかし使い辛いだろうにと感じるものだ。

現在自分はアウディA8に乗っている。
その前はメルセデスEクラスを4台乗り継いだ。そのすべてが右ハンドルであった。
『ベンツでも右ハンドル?』と日本から来た友人が聞くので『イギリスでは基本的に右ハンドルしか運転しないよ!』(ごく稀に個人が持ち込んだ左ハンドルの車も見るが)と答えるとヘェーという顔をする。 

街中を走るポルシェやフェラーリまで判で押したように右ハンドルである。
なぜ日本と違うのか?

交通システムが車の左側通行(=右ハンドル)を前提として作られている国で、左ハンドルの車なんぞ使いずらくて仕方が無い。
幸いにして高速道路は無料だから通行券を受け取る必要は無いが、駐車場に出し入れする場合など駐車券やお金を出し入れするたびに左ハンドルのドライバーは車から降りなければ入れられない。日本のように左ハンドル用の設備があるところなんて見た事がない。

また『左ハンドルは危険度が高い』と交通システム上で認識されており、保険料も随分割高になる。
日本でもこのところ保険料金が自由化されたと聞く。何年か後にはおそらく左ハンドル車の保険料は右ハンドル車より割高になる事と思う。

あるとき日本でメルセデスSクラスに乗っている友人に聞いた『この国で左ハンドルは乗りにくく無いかい?』
彼曰く『なれれば大丈夫だよ!』
オイオイ、それでは慣れるまでは危険な車を運転している事になるだろう。
自分も以前これとは全く逆の事を経験した事がある。だからその危険さが分かるのだ。 

もう25年以上前の話だが、当時ロンドンへ来てから初めて買った新車「日産サニー」を国外(フランス)へ乗っていった。フェリーからフランス側のカレーへ着いて,初めのうちはドックの中ということもあってあまり緊張しなかったが、いざ一般道へ入るや否や急に不安になってきた。
この場合は『日本で左ハンドル』の全く逆で『フランスで右ハンドル』と言うわけである。

初めに困ったのが追い越しの難しさ。前の車がトラックでも簡単には追い越せない。
なぜなら対向車の確認が容易ではないのだ。

次に高速を降りてからの右折や左折の時にはより一層緊張した。パリ市内の運転は田舎道の比ではない。凱旋門の周りを回る時などロンドンとすべてが逆なのだ。ロンドンのラウンダバウトも経験して居るのでなんとも無いだろうと思っていたら大変な事になった。

普通英国のラウンダバウトは中に居る車が優先度が高く、これから入ろうとする車は待たなければならない。しかし,そのつもりでフランスを運転するとえらい目にあう!彼の国は外からラウンダバウトに入る車が優先(本当は心臓の強い奴が優先)らしい。だから凱旋門の周りはいつも大渋滞!
2日でロンドンへ帰ったが、その時にその国の交通システムと逆のハンドル車を運転する事が如何に危険かを痛感した。

その後ヨーロッパはおろかアフリカでも左ハンドルの車を運転したが、その国のシステムにあった車であればフランスで経験したような危険さは一度も無かった。

メルセデスをベンツと日本人に教え込んでしまったヤナセはその影響力をもっと真剣に考える時にきている。日本のみならず韓国も中国も「ベンツ」と呼ぶそうである。ヤナセ流商法はこれらの国にも呼び名まで影響を与えた事を多くの人は知らない。

一般に欧米ではメルセデスと呼ぶ、会社名はダイムラークライスラー(以前はダイムラーベンツだったが)彼等欧米人が短く呼ぶ時は「マーク」という。「ベンツ」ではほとんど通じない。

輸入業者はヤナセのみならず良心的な業者であれば、日本に輸入される車は右ハンドルに限定するべきであろう。買う顧客に左ハンドルを運転する場合の不便さとリスクをはっきり説明して販売する姿勢が大切である。これの方が車間距離自動調整付クルーズコントロールや、夜間のレーダーシステムで前方の障害物を知らせるメルセデスのご自慢の最新兵器(勿論兵器ではない)ナイトビューアシスト、よりも余程基本的な安全対策であろう。

インポーターのメルセデスジャパン、最高級のマイバッハにも勿論右ハンドルはありまっせ!知ってるでしょうけど。現にどんな高価な車でも右ハンドルは用意されている。

一部のバカな車ジャーナリストの『右ハンドルの外車は左足のスペースが足りない』とか言う「たわごと」に乗せられて、危険度も不便さも我慢して乗って楽しいと思う人は相当おめでたいと言う他ない。

いつも道場の帰りに見る、小生には永遠に手の届かない車『ブガッティ ヴェイロン』(今年の価格は1億7千万円らしい)に目をやりながら、こんな車にも右ハンドルがあるのに『日本を走る時には左ハンドルなんだろうな?』と考えてしまった。

『まあ制限速度100キロの国でマークのSクラスやフェラーリも所詮宝の持ち腐れか』と悔し紛れに嘯いて今日は寝る事にしよう。


                         

2 件のコメント:

  1. 今の日本では、環境問題が大きく取りざたされています、取分け、車の排気ガスの問題が、地球環境に大きく影響を与え、温暖化にも、なっています。私も実は今、メルセデスに、乗っていますが、もっと環境に良い車に、変えようと思っております。私一人がすこしの環境を変えてもこの世の中が変わる訳ではないかもしれません。また私の今乗っているメルセデスが、手元を離れても、遠く中東のドバイ辺りで、誰かが整備もしないで乗るかもしれません。でも・・・
    水野さんのような、世界的に影響力のある方が、一石を投じて頂くと、変わっていくと思います。聞くところでは、少林寺拳法は、幸せ運動と聞いています世の中の全ての生き物を、幸せにしてあげて下さい。

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  2. コメント有難う御座いました。
    又、今最も深刻な環境と車社会の問題にスポットを当てて頂いた事に敬意を表します。
    小生もA8と言う環境対策から言えばネガティブな車を使っております。
    車が好きだからこそ、次世代の人達にも同じ様に楽しんでもらいたいと思うのです。
    その意味においてはより一層の技術革新と、
    乗る側の意識改革が必要であることはご指摘のとおりだと思います。
    昨年スイス旅行で使ったレンタカーのディーゼル車ルノーのラグーナが好印象だった為
    真剣に変える事を検討しております。
    日本ではディーゼル車へのイメージが今一つ悪い事は承知しておりますが、ヨーロッパではCo2対策ではガソリン車よりも環境への負荷は低いとの評価が一般的です。
    根本的な対策ではありませんが、ご指摘のように、先ず自分が出来るところから、と言う事を全てのドライバー(無理でしょうが)が
    実践していく事しか近道は無いようです。

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