2007/02/06

一期一会なるもの

自分の年代はいわゆる団塊の世代である。
日本ではこの世代が退職期に入り何かと話題も多い。この世代の特徴かもしれないが戦後日本の混乱期に生まれたせいか色々な事を体験してきた。

その内の一つとしてビートルズ世代とも言えるであろう。
それまでのロックやポップスに見られなかった革命的音楽的変化をもたらし当時世界中から熱狂的に支持された音楽である。当然、日本も例外ではなく沢山のビートルズファンを生み出しビートルズ以前と以後とでは音楽的影響も計り知れないと思う。

そんな音楽の洗礼を中学、高校生時代の多感な時期に受けた世代は現在でも当時の音楽をこよなく愛している。またそんな人を少なからず知っている。

そんなビートルズの音楽に自分も周りも浸っていた高校生の時に友人からコンサートに誘われた。聞いたことも無いミュージシャンでJAZZの偉大なプレーヤーだと言う。

「めったに聞けるミュージシャンではないから是非いっぺん聞いてみろ。好きになるから。」と言われ、 乗り気がしなかったが一緒にコンサートに出かける羽目となった。そのミュージシャンの名前はもとより高校生の自分にはJAZZなど興味の対象には全くと言って良いほど無かった。

コンサートが始まる前にミュージシャンの紹介があり、そのミュージシャンの名前が”マイルス デイヴィス”と聞かされたがほとんど同時に忘れていた様な状態だった。しかしその少し後に始まった音楽がその後の自分の音楽に対するテーストを180度変えてしまったのだ。

名前も知らなかったマイルスが吹き始めたトランペットの音に、知らない曲ばかりであったが恐ろしく集中して聞いている自分に気が付いたのは前半のコンサートが終わり休憩に入った時であった。マイルスの発する音の一音一音はそれまで聞いたことの無い新鮮で印象的、一度聞いたら忘れない驚愕の音だった。

そんな訳で音楽を勉強して理解できてJAZZが好きになった訳ではない。
すごい音に驚いて興味を持ち、そこからJAZZなるものにのめり込んで行ったと言うのが正直なところである。

『JAZZは難しくてよく解からない』と言う人が居る。
ではビートルズの音楽は本当によく分かって好きになったのだろうか?

自分の場合はそうではない。刺激的な音、それまでに無い綺麗なハーモニーと旋律、別に歌の文句がすべて理解できて好きになった訳ではなく感覚的に、聴覚的に好きになったと言える。JAZZの場合も全く同様で聞いてその音に驚き、音そのものに感動して好きになったのである。

茶道や武道の世界では一期一会と言う言葉が使われる事がある。
人との出会いの大切さと繰り返す事の出来ない時の大切さを説いた一句であるが、これは何も人だけに限らない事を随分たってから気が付いた。

音楽の趣向がマイルスとの出会いから180度変わった顛末を述べたが、同じ時期一冊の本との出会いがその後の自分の人生を大きく変えた事も事実である。
友人から借りた「秘伝少林寺拳法」と言う本に出会わなかったならば今日自分ははたして、このロンドンで少林寺拳法の指導者としてやっていたのであろうか。

これら人の人生の転換期の中で大きな影響を与える人や本や音楽など “一期一会” と呼べるものはそこら中に転がっているように思う。そんな中でそれと何時どのように出会うのか、自分にとっては思春期の多感な時代、音楽にもそして少林寺拳法にも出会ったのが一期一会だったのだろう。

時間が、場所が、年代が少し違えば一期一会で無かったような気もしている。

0 件のコメント:

コメントを投稿