2007/06/16

天才は居るか?

フォーミュラー 1(F1)グランプリが今年は面白い。その理由は新人ルイス ハミルトンだ。

黒人初のグランプリドライバーは何かと話題も大きい。今年のグランプリ シーズンを迎えるまでルイスの存在はそれ程騒がれると云うほどのものでは無かった。しかし開幕のオーストラリア グランプリで2位に入るやマレーシア、バーレン、スペイン、モナコと立て続けに2位を獲得した。これは驚くべき結果である。そして優勝も時間の問題と思われていた矢先、なんと先日のカナダ グランプリで見事優勝を飾ってしまった。

自分は車のレースやラりーが好きで日本に居た頃も鈴鹿サーキットまで見に出かけた事は前に触れたが、ロンドンに住むようになってからは余り行ってはいない。一度だけロンドンの郊外にあるブラウンズハッチというレース場にグランプリを観戦に行った事がある。

当時は未だセナやプロストが活躍する前の時代である。今ウイリアムズ トヨタにいるニコ ロスバーグのオヤジ ケケ ロスバーグやブラジルのネルソン ピケ、オーストリアのニキ ラウダと言う歴代のチャンピオン達が活躍して居る時だった。

彼等は皆非常に個性の強い人達だった。そしてそのドライビングスタイルも各ドライバーの個性同様に異なった特徴を持っていた事が自分にとってグランプリに非常に興味を持たせる事となった訳である。

現在のグランプリ ドライバーも結構個性は強い。自己主張も人一倍強くなければこの世界で伸してゆく事は難しいのだろう。しかし、同時に非常に繊細な面も持っていたのがアイルトン(セナ)だったように思う。彼は天才だと今でも思う。

マイケル(シューマッハ)に破られるまでP.P(ポール ポジション)の獲得数は圧倒的だった。事故で死ななければマイケルでもP.Pの数でアイルトンに勝つことは難しかった事だろう。P.Pのようにここ一番に掛けるアイルトンの勝負強さこそ天才と言うものではないかと思う。

87年〜88年に掛けて第二期ホンダ エンジンがグランプリに挑戦した時代があった。この時代ターボ チャージャーが付いたエンジンはわずか1500ccのエンジンで1000馬力を軽く超える出力のエンジンが普通であった。Q(予選)専用のエンジンにいたっては1500馬力とも云われる時代で、ホンダ エンジンが完全に他社を圧倒していた時期でもある。

87年のブリティシュ グランプリでは何とポデュム(表彰台)の3人では収まらず4位にも中島悟が入るという、ホンダ エンジンでなければ勝てない時代に突入していった。翌年は何と16戦中15勝、イタリア グランプリのアクシデントによるリタイア以外は全てがホンダ エンジン搭載車が勝つという日本人のグランプリ ファンにとっては痛快な年となった。

自分はアイルトンが天才だと思ったのは先に記したようにP.Pに於ける彼の圧倒的な強さだった。そして天才ドライバーはデビューの年にすでに何度かの優勝をしている。マイケルが出てきた時もそんな感じがした。

数多くのその他大勢のドライバー(彼らとて選ばれたドライバー達ではあるが)とはかけ離れた何かを持っているのが天才と呼ばれるゆえんであろう。残念ながらアイルトンとマイケルの対決は、マイケルがデビューした年にアイルトンの事故死によって決着がつかなかったが、もし彼が生きていればマイケルのP.P最多記録も変わっていた事も充分考えられる。

今年はマイケルも引退し、2年連続でチャンピオンに輝いたフェルナンド(アロンソ)がマクラーレンに移籍、そのティーム メイトがルイスである。その22歳のルイスが素晴らしい走りを見せている。

このところ自分も忙しくなかなかグランプリの中継も全てみる事が出来ないが、TVのハイライトで見たカナダ グランプリで見せたルイスの走りは紛れも無く次世代のチャンピオンを感じさせる何かを持っている。

ロバート(クビカ)の事故は衝撃的な映像だったが、こんな車の原形が分からない様な事故でも現代のグランプリカーはドライバーに軽い怪我しかさせない構造になっている。一昔前なら確実にドライバーはあの世行きだった事だろう。そして半数しか完走できなかった過酷なレースにおいてルイスが見せた走りは群を抜いていた。

聞くところによるとマクラーレン メルセデス ティームのボスであるロン デニスが12歳の時にカートをしていたルイスを見つけ経済的サポートもしたと言う事だ。当時からルイスは光るものを持った少年だった事になる。

元々がヨーロッパの貴族達によって楽しまれてきたグランプリ レースであるからメーカーにしてもホンダやトヨタはヨーロッパのメーカーに比べて何倍も努力している。その様な背景が分かるだけに個人的にはルイスを応援したくなる。

勿論タク(佐藤琢磨)を日本人として応援するのは当然だが、半分イギリス人(英国での人生の方が長いので)の自分としてはルイスも天才的要素を感じさせるだけに応援したいのだ。 

話は飛ぶが、日本で何かと批判の多い横綱朝青龍、自分は好きだ。彼の見せる勝負への執念、気迫、スピード溢れる技、そして優勝した時見せる涙、日の丸に面と向かって唄う君が代、プロ野球選手の外国人でそんなの見たこと無い。
 
横審とか云うわけの分からない年寄りがとるに足らない事に文句を言っているのを聞くと情けなくなる。 いったい貴方達はそれ程相撲に詳しいのかね。そして朝青龍と同じ年代の頃、何の欠点も無い人格者だったのかと聞きたくなる。

半分イギリス人だと言った自分でもユニオンジャックに向かって英国歌"ゴッド セーブ ザ クィーン"を唄った事は無い(唄えない、歌詞を知らない為)。君が代を唄える外国人は多くは無いであろう。自分が33年間もイギリスに住んでいるのに英国歌が歌えないことを考え合わせると、朝青龍の態度は立派だと思う。

何も日本の国歌を唄えるから立派だと言っている訳ではない。心が伴っていないと(その国に対し敬意や感謝する気持ち)ナショナル アンサム(国歌)などは簡単には唄えないものだ。 大衆の面前で堂々と日本の国歌を唄う朝青龍はそれ以前の横綱、曙や武蔵丸(彼らが悪い訳では決してないが)とは一味も二味も違う横綱だと思うが、皆さんの見方はいかがであろう。

新しい横綱も誕生し来場所からの大相撲は盛り上がりも期待できると思う。残念ながら二人とも日本人横綱ではないが、数多く居るその他大勢(良い例えではないが)の力士に比べ出世のスピードから見れば朝青龍も天才なのかもしれない。

グランプリ レースも大相撲も天才は見ていて楽しい!願わくば両方の世界で日本人の天才が現れて欲しいものである。

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