
ヨーロッパ大会は青坂先生と小生が80年代から始めた大会で、ヨーロッパで少林寺拳法を修練する拳士を対象にした4年に一度催される大会である。
初めのうちはフランスやイギリスの10周年とか15周年記念にあわせてやっていたが、定期的にヨーロッパの拳士達を対象にした大会も必要ということで青坂先生と相談の結果、国際大会の2年後に行うようになった。
又国際講習会も同時に催されるようになり、普段顔を合わせることの無いヨーロッパの拳士達が回が増す毎に参加者が増えてきた事はこの道を普及しようとする我々にとっては大変喜ばしい現象である。
イタリアがホスト国となったヨーロッパ大会は今回が初めてである。これまでにもヨーロッパ講習会などを催した経験は有ったが大会は今年が初めてであった。大会会場となったノルチャという町は古い街で、首都ローマから北東に位置し、バスで移動した我々は3時間くらい掛かった。
小生は講習会でこの町を訪れた事が過去に2度ほどあるが山の中にある街であるため大きな市では無い。この街はイタリア人が観光で訪れる様で歴史的な街の雰囲気を至る所で見かける。丁度英国に於けるコッツ ウォールズの村や街の様な存在の場所なのかもしれない。

イタリアは何時訪れても楽しい国である。先ず食べ物が美味い。『イギリスから出かければどこでも美味いだろう』と云われるかも知れないが、街で見かける小さなピッツリアのピザでも美味い。
始めの2日ほどはそれが良かったのだが、さすがに3日目くらいになると日本人はご飯が恋しくなる。青坂先生などは『お茶付けが食いたい!』と食事の度に零していたが、それは何も青坂先生に限った事ではなく自分もさすがにその頃には肉中心の食事には飽きて来た。
アンチパスタ(前菜)から始まる食事はパスタ、メイン(肉料理)と続きデザートとエスプレッソが出る頃には苦しいくらい満腹状態である。しかし毎日肉料理は本当に辛い、野菜料理は見事に出なかった。
アンチ パスタもプロシュート(生ハム)やサラミ等の肉料理だし、パスタはペンネやスパゲティー等の麺類でトマト味がベースで美味いけど辛い状態になる。海から遠いノルチャの街の事情も大きく影響している事は確かである。しかし野菜くらいはふんだんに出して欲しいものだ。最終日には何とかサラダも出てきたが、ともかく『お茶付け』と叫びたい気持ちは痛いほど共有できた。
ローマに移った最後のディナーは海老やイカ、魚の料理が専門のレストランに行ったが肉料理に辟易していた我々日本人には最高の料理だった。

22日ノルチャに到着した我々は市庁舎の前にある広場で参加国の拳士達が国旗を先頭に、異なった色のTシャツを着て行進し、見ていた市長をはじめ観光客も大いに喜んでいた。
ノルチャと言う小さな町にヨーロッパは元より日本、ロシアそしてアルゼンチンと言った国から参加した拳士達によって繰り広げられる踊りや音楽がそれらを盛り上げるのに大いに役立ったことは云うまでも無い。市庁舎のバルコニーから挨拶に立った宗由貴WSKO会長にも沢山の拍手が送られていた。
このような催しをさせるとイタリア人は天才的だ。盛り上げる事が実に上手い。ヨーロッパ大会も非常に成功だった。パソコンをリンクして集計から順位決めまで実に効率良く大会を進めて行く。これはヨーロッパの国では最初に全国大会を開いた英国より現在でははるかに運営が上手だと認めなければならない。
英国連盟も昨年から年間行事として大会を復活させているが、一度中断していた大会の運営と言うものが時間の変化と同じで現在ではなかなか効率的な運営と言うものが難しい。そこへいくと92年から毎年全国大会を運営しているイタリア連盟は今では参加拳士も多くなりヨーロッパでは最も大会運営が上手な国になったと思う。



大会の会場は日本やインドネシアと異なり、柔法マットの様な物を演武をする全てのコートに敷いて居る。その為どうしても派手な投げ技が多くなる傾向は否めない。主審をして気付いたが、級の女子拳士でも有段者の拳士の真似をし派手に飛んでいるのだが、膝から着地している様な場面に何度か出くわした。これは世界大会では出来ない演武だなと思ったが、他のヨーロッパの審判達には受けが良かったようだ。
フランスでの大会もマットを敷いていたがラテン系の拳士達にはこの方が好まれるのかも知れない、英国は初めから日本と同じコートと言う理由でマットを敷くことは無いが、これに慣れた拳士達にとっては早い動きの突や蹴からの柔法が難しい(足場が不安定に感じ)と言う不満も英国や北欧の拳士から聞いた。国際的なルール改定が進む中では重要な案件になる事も充分予想される。
少林寺拳法創始60周年を記念する今年、ヨーロッパ大会を成功に導いたイタリア連盟は今後益々自信を深めて行く事であろう。我々も負けては居られない。英国連盟拳士が一丸となって発展させて行かなければならない事を今回のヨーロッパ大会は指し示してくれた。
今一度大会の運営に裏方として大きく貢献したイタリア連盟の拳士達に『大会の成功おめでとう!』と同時に『有難う』とお礼を言いたい。
