2007/09/11

人材育成には時間がかかる

大阪で開かれた世界陸上が終了した。日本人選手の成績が女子マラソンの土佐選手の3位を除いて中々思うような結果に結びつかず、当初期待された日本人アスリート達が予選から決勝に進めない事に、多くの日本人が歯痒い思いをしたかもしれない。

しかし考えてみればこれは順当な結果ではないだろうか。今回期待された多くの選手は確かに過去の海外における世界クラスの大会において良い成績を収めた実績もあるが、彼らや彼女らの過去における好成績は日本新記録を出して3位入賞や2位で銀メダルと言う結果がほとんどである。

確かにハンマー投げの室伏選手のように先のオリンピックで金メダルを取った選手も含まれては入るが、塚原、末続、高平、朝原という日本短距離界のスター選手達が日本新記録を出した400Mリレー決勝の結果が5位と言う事は何を物語っているのか。現時点における日本人選手の短距離における実力はこの辺りではないのか。

メディア等には日本での開催が選手にとってプレッシャーになり結果に結びつかなかったと言う論調もあったが自分は逆だと思う。

海外での大会に比べれば日本人選手は大きなアドバンテージを持っていたはずである。数多くの観客の応援は何のスポーツでも自身の持つ力のプラスには働いてもマイナスになるとは思われない。また体調管理においても海外の選手に比べれば食事も普段のものだし、気候や時差などによる変化も少ないはずである。この事は陸上競技短距離界においてまだまだ世界のトップ アスリート達と優勝を争うまでにはなっていないと考えられる。

水泳競技は早くから日本は比較的数多くの優れたスイマーを輩出してきた。オリンピックにおける金メダルの数も他競技に比べれば多い方であろう。もちろん日本のお家芸柔道などに比べれば少ないが、この事を考えると世界で戦えるアスリートの人材育成には時間が掛かると言う事ではないか。

そして今一つ見過ごされそうな要素に人種による適正性は無いのか?陸上競技の圧倒的分野で短距離から長距離までアフリカ系選手のしめる層の厚さである。少林寺拳法をロンドンで教えているからこそ感じる人種による肉体的特長と言うものは確かに存在する。

アフリカ系(黒人)選手は骨太で筋肉が非常に強い!これは陸上競技に限って言えば大きなアドバンテージである。アメリカも英国もそしてアフリカ系の国民が居る国の陸上競技の代表は間違いなく黒人中心である。つまりよほどの例外的なタレント性を持った人材が現れない限り白人や黄色人種がアフリカ系民族を陸上競技で打ち負かす事は非常に難しいと思う。

しかしながらその黒人の持つ身体的特徴は水泳には不向きのようだ。一頃は人種差別が理由で黒人が充分な練習が出来ず優れたスイマーが現れないと言われた事もあったが、どうもこれは陸上競技のアドバンテージが逆に働き、骨太で強靭な体(重さ)が水の中ではディスアドバンテージになっているのだと考えるようになった。この様な人種による特徴は確かに競技種目において色濃く現れる事はスポーツ競技の集大成であるオリンピックを見てみればよく理解できるのと思う。

話を戻して、ハードウエアーの世界では日本の工業製品は殆んどの分野において世界で最も競争力の強い製品を送り出す国である。明治以来産業革命で遅れを取った日本はヨーロッパの国々から新しい技術や人材教育法をどんどん入れて日本の競争力を付けてきた。

富国強兵もその一つでヨーロッパの国から学んだ大きな要素である。その結果明治から今日に至るまで140年以上を経て日本の工業製品に対する世界の人々からの認識には確固たる地位を築いたと言える。

自分は車が好きな為GPレースにも興味があり殆んどのレースを見ているが、日本の車メーカー ホンダが60年代から参戦して比較的早い80年代中期には圧倒的な強さを誇った時期がある。その後他社メーカーの参戦もあったが中々結果を出すまでには至らなかった。最近では世界のトップメーカーにまで成らんとするトヨタが参戦してはいるが結果は未だ出して居ない。

しかし、もの作りに対する日本人の実績には疑問を持たないからトヨタやホンダが良い成績を出すのも時間の問題であろう。

残念ながら日本人ドライバーは佐藤琢磨になって初めて世界の一流処と戦えるドライバーが出てきた、彼もおそらく日本の陸上競技短距離選手と同じ様な立場なのではないか?彼が今年のフェラーリやマクラーレンに乗っていればアロンソやハミルトン、ライコネンと言ったドライバー達と対等に戦えたであろうか、小生は可能だと信じる。F1の日本人ドライバーには過去に中島や鈴木、片山といったドライバー達が出ているがその世代のトップ ドライバーとの間には大きな差が存在した。

その点、車のF1と同じくレースだけの為に作られたオートバイのグランプリである。MotoGP(モーターサイクルのグランプリ)には比較的日本チームや選手が早くから参戦していると言う実績もあり、世界チャンピオンも250ccクラスで過去に輩出している。

近年のグランプリ500ccクラスにも玉田誠が参戦して、時にはワールドチャンピオンのバレンチーノ ロッシに勝つ事もある。その他のカテゴリーでも日本人選手の層は厚く時々優勝のポデュームに上がる選手を見ている。

逆にひところ日本のバイクメーカーの独壇場だったMotoGPの世界にこのところイタリアメーカーの台頭が著しい。 レースには車のフェラーリと同じくらいの実績を持つドゥカティ、そしてアプリリアと言った新参ティームが結果を出すようになってきた。

これも世界の巨大メーカー ホンダ、ヤマハ、スズキと言ったGP常連組に挑戦する姿は、かつてのホンダがマン島TTレースに挑んだ姿に重なる。英国のバイクメーカーBSEやトライアンフ、ノートンと言った名だたるメーカーを打ち負かしてしまった事が結果的には極東の小さなバイクメーカーが世界のホンダにのし上がるきっかけであったことは歴史が証明している。

ホンダの創始者である本田宗一郎氏が世界に挑戦し続けた事が結果として人材を作り、バイクメーカーとしての確固たる地位を築いた事は言うまでもない。いまやホンダと言うメーカーはバイクばかりではなく車メーカーとしても世界屈指の巨大製造者となった。

この様に観察してみると完成度の高い工業製品やそれを可能にする為の産業の育成、そしてそこから作られた優れたハードウエアを使いこなすGPレーサーやライダー、又優れたスポーツ競技者を輩出する為には多くの時間と情熱そして環境が大切な要素である事が理解できるのではあるまいか。

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