2007/08/08

銃規制とは

先週の土曜日の昇段試験の前夜,試験会場であるBrixtonの地下鉄駅の近くで射殺事件があった。殺されたのは10代の少年であった。ここBrixtonでは去年からこのような事件が続いている。

少し前にアメリカと日本でも銃による残虐な事件が相次いだが、その様な事件が起きる都度言われる言葉が『銃規制』である。

日本には元々拳銃等の武器は一般には入手できない事になっている。アメリカは勿論銃規制は無いがヨーロッパでもフランス等の様に拳銃を買うことが出来る国もある。ただ弾が買えないらしい。


アメリカ社会で銃による凶悪事件や悲惨な現状がマスメディアに流されるたびに銃規制が叫ばれるが、現実には規制に対する強い抵抗があるようだ。我々日本人的な感覚からすれば銃など無い社会の方が平和で住みやすいと考えるのだが、アメリカ社会では未だにその様な考え方はマジョリティーにはなりえないようである。

これは歴史的背景も大きく影響しているのかも知れない。『自分の事は自分で守る』と言うアメリカ建国以来のフィロソフィーなのであろう。しかし時代はアメリカが独立した当時と現在では環境も大きく変わってきていると思うが、なかなか規制には大きな障害があるようだ。

日本の社会は本来なら銃そのものが禁止されており、猟銃でも規制が厳しく誰でも持てるわけではない。しかしこのところ頻繁に起きる銃による凶悪事件を見るに付け、いったい日本と言う国は本当に銃規制をやろうとしているのか疑問の方が大きくなってくる。

暴力団が持ち込む拳銃によって日本の至るところで問題が引き起こされる都度、何故警察は真剣に取締りをしないのか?現実には警察も手をこまねいて居る訳ではない筈であろうが、以前よりも頻繁に起きる銃による事件を見聞きすると銃規制はどうなっているのだろうと思うのである。

英国も日本同様個人の拳銃等は所持が認められていないが、ここでも近年銃による事件は増えている。こう考えると銃規制がなされて居る国においてさえ違法に持ち込まれた銃を規制することの難しさを改めて思い起こさせる。こんな現実をアメリカ社会では自分の身を守る為の口実として認めているのかもしれない。 

銃も核兵器も突き詰めた見方をすれば同じであろう、銃が無い社会の方が住みやすいと思うことは核兵器も無いほうが住みやすい事と同じではないか?包丁やベースボール バットでも使い方によっては凶器となる事は事実ではあるが、これらの道具は元々その作られた目的が人や動物を殺傷する為のものでは無いはずである。

拳銃や核兵器が人や生き物を殺傷する事を目的として開発されたものである事を考えれば、その様な人を殺す以外に目的の無い銃火器や核兵器を含む大量破壊兵器はやはり人間社会にとって無いほうがより平和ではないだろうか。

確かにイギリスや日本でもこのところ銃による事件が頻繁に起きている、しかしそれでもアメリカ等よりは余程銃による事件は少ない事も事実である。イギリスは警察官でさえ拳銃を持っていない。特殊任務の警察官は別として街で見かける警官は拳銃を持たないのが普通である。一般市民も拳銃を持たない警察官を支持しているようだ。

同じく銃規制のある日本の警察官は拳銃所持が普通である。ここで問題になるのは拳銃を持っている警察官がそれをなかなか使えない事かもしれない。現実に銃を持った犯人の取り締まりにさえ日本の警察官は慎重である。慎重であることは結構な事だが死傷者が出たり警官自身が被害に遭うまでなかなか銃を使えない事も問題ではないか。

ロンドン警視庁の特殊部隊(銃を持った)が出動する場合はためらい無く犯人を撃つことが許されていると聞いた。それだけ普段拳銃を持たない警察官ではあるが、ひとたび銃を持って事件の鎮圧に出向く時には状況に応じて個々の警官に発砲の権限があることも確かである。2年ほど前にロンドンの地下鉄の中でテロリストと間違えられたブラジル人が私服警官に撃ち殺される事件はまだ記憶に新しいが、撃った警察官が罰せられたと聞いた事は無い。人権団体から抗議もあり、又被害者家族には慰謝料も払われた事は言うまでも無いし、被害者には本当に気の毒な事件であったが警察官に発砲の裁量が任されていると言うよい例であろう。

又フランスの警察署長からも聞いたことがあるが、フランスでも銃火器を持つ特殊部隊が派遣される場合には確実に犯人を狙撃(射殺)する事を目的としているそうである。対外的には生命に問題が無いところを狙うという事らしいが、現実には確実な殺傷を目的として狙うそうである。当然の帰結だろう、下手な同情で足などを狙ってそれが原因で被害者が増えてしまってはよけいに特殊部隊を派遣した責任を問われてしまうであろう。

この様に銃に対する認識でも日本とそれ以外の国ではとらえ方(使い方)に大きな差がある、日本の警察官に同情するのは市民を守る為の有効な武器を持っていながら使えない(使い辛い)環境があることだろう。勿論簡単に拳銃を振り回せと言っているのではない。任務として警察官の拳銃所持を認めているのであれば市民生活を守る為にはある程度の警察官個人の判断が尊重されるべきではないかと思う。

市民を守る為の警察官の拳銃と、国を守る為の自衛隊の有する陸、海、空の戦力が同じ様にならないようにしっかりとした法整備が必要な時代になってきたのではないかと思う。

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