2007/08/11

他人の目が気になる日本人

日本をそして日本人を海外に居て眺めると、日本人ほど他人(他国)の目を気にする国民も少ないと思う事が時々ある。勿論現在の日本がおかれた立場を思えば、ある程度の外国からの意見や注文に対して注意を払う事は必要であろう事も充分に理解できるが。

その良い例が産業界の成功であろう。日本の企業は海外に於けるクレームや要望に謙虚に耳を傾け、対処してきた事が今日多くの分野で成功したその良い例ではあるまいか。

随分前の経済欄に載った車の製造にまつわる日本企業と海外の企業の有り方を紹介した記事だったと思うが、日本のユーザーからVW(ヴォルクス ワーゲン)輸入元に、ゴルフのインジケーター(方向指示器スイッチ)が『右ハンドル車のゴルフであっても左側(左手で操作)に付いているが、他の日本車同様に右側(右手操作)にならないのか?』と問い合わせが有った為、その件をVWのドイツ本社に伝えたところ、『右ハンドルの英国でもその様なクレームは付いた事が無い、単に慣れの問題でしょう』と答えが返ってきたと言う。

これが日本のメーカーであれば当然現地の意見として直ぐ採用されるかどうかは別としても、『設計変更が可能かどうか検討して見ます』くらいの返事はするであろう。又多くの車を輸出している国からの要望であれば当然その国の事情に合わせた見直しも行われる事であろう。この様な顧客からの意見やクレームに真摯に耳を傾け、それに応じた対応を取ってきた結果が日本車や工業製品が世界で強大な競争力を持つに至った要因ではないかと思う。

しかるに外国では事情が異なる事がよくある。彼等は他人(他国)の目を余り気にしていない(ように感じる)。先にあげた車メーカーの例ばかりではない。

政治においても、環境においても自分たちは間違って居ないと信じて居るようだ。アメリカ等は特にその傾向が強く自分達は世界の盟主とでも自負しているかの様な態度をよく見る。政府がその様に振舞うと言う事は国民の多くも同じ様な考え方の人が多いと思わなければならない。

外国からの視線を気にする日本人にあってよく頑張っているなと感じる事が捕鯨問題であろう。反捕鯨国の中心国のほとんどは以前には捕鯨大国であった。彼等の言い分はこれまでのところかなり場当たり的で一貫性の無い主張である。

IWCと言う国際捕鯨委員会は現在では反捕鯨の代表のような印象を受けるが、実際には鯨資源を管理して有効に鯨資源を使えるようにとの目的で設立されたものである。ところが1970年代中頃にはグリンピース等の環境保護団体に牛耳られてしまい80年代初めにはモラトリアム(一定期間の捕鯨禁止)が採択されるに至った事は有名である。

反捕鯨に関しては色々な説があるが、捕鯨そのものに反対する事に関してはほとんどの欧米人が好意的である。それが環境保護をうたい文句にしても、動物愛護にしてもだ。それに対して捕鯨を有力な資源と見ている国は日本以外ではノルウェーやアイスランド等があり、日本を除くそれらの国はIWCからすでに脱退している。

これら捕鯨推進派の国は環境保護団体と動物保護団体の両方から攻撃の対象となる訳だが日本以外の国が標的になったニュースを余り見たことが無い。新聞やテレビニュース等を見ていてもこれら反対派の行動は過激である。IWC総会が行われる国でも彼等の行動を厳しく取り締まる事を余り見かけない。もし捕鯨賛成派が同じ様な過激な行動を(取るとは思えないが)取ったとすれば、おそらくニュースで大々的に取り上げ糾弾する事はほぼ間違いない。

10年ほど前に拳士に捕鯨に対する考えを聞いたことがある。一人の拳士はグリンピースのメンバーであると言い『日本は捕鯨を再開させようとしているが鯨は絶滅の危機に直面している、だから獲るべきではない』と言う。そこで小生が『では充分な数が確認されれば君は捕鯨を再開しても良いと言う意見か』と聞き返すと、『日本は調査を名目に捕鯨を続けているがこれにも反対だ!』と答えにならない事を言う。付け加えるように『鯨は賢くてかわいい生き物だからそれを殺す事は許されない』ときた。おいおい。

だいたい想像通りの答えだったのでこう質問してやった。『君はウェーリング オリンピックを知っているか?その時(60年以前)英国は捕鯨大国でいつも金か銀メダルを取っていたよ、そのお陰でブルー ウェール(シロナガスクジラ)は絶滅寸前まで減ったが。』と聞いたがほとんどの拳士は知らなかった。グリンピースのメンバーでも自分たちの反対している運動が純粋にその目的の為になっているのか、単に都合よく一部の勢力に利用されているのかその元(本当)の理由を知らない人達が大半である。

小生は『鯨が絶滅する事を最も真剣に危惧している国は日本だ。なぜならばこれからも有効な地球資源として食べ続けたいのでね。』と言うと皆笑っていた。『それと君が意見を言う事は結構だが普遍性の無い主張ではこれからも日本人は納得しないよ。ところでグリンピースは環境保護団体か動物愛護団体かどっちかね?』と聞くと『環境保護団体です。』と答えた。ほんとかね?

環境保護団体と言っても簡単に信じることが出来ないのが現実である。南氷洋での調査捕鯨の船に火炎瓶や塩酸か硝酸の入った瓶を投げつけるシー シェパード等も人命軽視と言われても仕方が無い過激さである。人命軽視の団体に環境保護や動物愛護が言えるかと小生などは思ってしまうが、全体的に欧米における鯨、イルカに対する感情はハリウッドで作られた映画等の影響が大きく、賢くてかわいい動物とイメージは多くの共感を得ている。そこに政治的な目的に利用されやすい危うさも当然あるが、当の環境保護や動物愛護
を謳う団体に所属している人達はそのほとんどが洗脳されている事に当事者が気付いていない。

環境保護を云うのであれば自国の大統領(自身が所属する団体の利益の為)が京都議定書から逃げて、世界で一番環境破壊(地球温暖化)のCO2排出を黙認しているリーダーを先に糾弾するべきではないか?又動物愛護を唱える団体が人命軽視の行動をとり自分たちが食べる牛や豚、鳥などは問題にしないばかりか、狐狩りやキジ撃ちと称するブロッド(血)スポーツには伝統文化だと言う言い訳をするダブルスタンダード(二重基準)ではこれからも捕鯨を促進する日本人を説得する事は難しいと思うが。

捕鯨問題は完全に政治であって環境保護や動物愛護は良い道具として使われている。ハリウッドが果たす役目が大きい事を彼等政治に利用しようとする人達が見逃すはずが無い。自分たちの政治的失敗から目をそらせさせる目的の為なら10や20の環境や動物愛護のNPO法人を資金援助することなど造作もないことである。

日本人が他人(外国)の目を気にすると言う事を一番良く知っているのも又彼等欧米人である。又逆に他人(外国)の意見を無視する事や二重基準で言い逃れる事が得意なのも彼等のしたたかさであろう。

敵(相手)を知り己を知れば百戦怪うからず。孫氏の兵法を持ち出すまでもなく日本人も他人の視線ばかりを気にする必要は無いと云う事であろう。

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