2007/12/04

国家権力とは

のっけから国家権力等と云うといきおい政治がかった話と思われるかも知れないがそうではない。どこの国でも外国人が最初に入国しようとする時に出会うのがイミグレーション オフィサー(出入国管理官)である。

ロンドンに住んでから少林寺拳法の指導や家族とのホリデーなどで国(この場合は英国)から出入りする事が多くなった。 年に何度も出たり入ったりを繰り返し、ほとんど要領は飲み込めているので英国においてもはや問題は無いのだが、それでも労働許可証を貰った後にも入管での受け答えには注意をした事を未だに覚えている。

なぜ注意が必要かと言えば彼ら出入国管理官(入官)には外国人の入国を許可しない権限も含まれているからだ。

もし入管の心証を悪くすれば例え労働許可証があったとしても入国を拒否されかねない。また最終的には許可が下りたとしてもそれまでに掛かる手続き等色々と面倒な事になるからだ。

日本に入国する外国人の大半は成田の入官の対応をうけることになる。これから日本に入国しようとしている外国人にとってある意味緊張する場所である事は同じなのであろう。 しかし自分が見た全く反対の光景は今でも鮮明に覚えている。

それは成田に限らずどこの国のイミグレーションでも自国民と外国人を入国審査するゲートは異なっている。自分が見た光景は日本人のゲートに平然と並んでいる30歳くらいの外国人(白人)が居た。不思議だなと思ったが家族が日本人でそこに並んだのかな?と想像したがそれらしい人も近くには居なかった。やがてその男の番が来て入管の前に立った時、入官から『外国人は向こうに並んで』と日本語で告げられた。当然の帰結であろう。

普通であればまた外国人のゲートの前に並びなおさなければならないはずであるが、なんとその男は『○uck off』と言葉を残してパスポートに入国許可のスタンプも無く平気でbaggage reclaim(手荷物受け取り)の方向にあるいて行った。

この男もすごいが、自分がもっと驚いた事は、入官がその男を追っかけ捕まえるわけでもなく、只手を2,3度横に振りそのまま放置して何もしなかった事である。

同じ事を日本人がロンドンのヒースロー空港の入官の前でやったらどうであろう、間違いなく国外退去で日本まで官憲に付き添われて強制送還させられる。イミグレーションのオフィサーとは言い換えれば国家権力の対面を持った仕事とも言える程強力な権限を持たされているのが普通である。そう信じていた自分はこの成田の出入国管理官の態度にはどう考えても納得が行かなかった。入官がそこまで馬鹿にされると云う事は、言い換えれば日本人全体が馬鹿にされたことと同じ意味合いを持つ。本来ならば自分の間違いを詫びて並びなおし入国を許可してもらわねばならないはずの外国人から侮辱の言葉を投げつけられて、何もしないとは一体彼らは何の仕事をしているのであろうか。

別の実例も紹介したいと思う、3年ほど前に日本から来た3人の指導員と共にアフリカ地区講習会に行った時のことである。

ヒースロー空港からケニアの首都ナイロビ行きの飛行機に乗り込んだ我々に、何か男の声で叫んでいるような声が聞こえた。

声は益々大きくなり、よく聞くと『イタイ!イタイ!』『助けてくれ』と言うような事を泣きながら訴えているようだった。

そしてその方向には屈強な2人の警官が上から毛布のような物を被せて、下にいる黒人の男の頭を上から押さえつけている光景が飛び込んできた。婦警が周りの乗客に説明して回っている。しばらくして我々のところに来たので聞いてみると国外退去命令(強制送還)の男のようである、今日の朝ナイロビからロンドンに着いて入国しようとしたのを拒否されたらしい。

婦警が『飛び立つとあきらめて静かになります』というのでホントかな?と見ていると、婦警の言ったとおり飛行機の車輪が滑走路を離れた瞬間叫び声は聞こえなくなった。手には手錠が掛けられていたが男は平気そうな感じだった。 フーン官憲とはそこまでやるんだ!と言うのが偽らざる印象だったが、果たして日本の官憲がこの様な場合手錠を掛けた外国人を頭から布を掛けて、座席の間に押さえ込んでいる姿はなかなか成田の一件を知っている自分には想像できなかった。

本来の任務(この場合不法入国者の国外退去)を遂行しようとすれば周りの乗客に対する配慮(説明等)は必要であろうが、第三者の視線を気にしているばかりではこの様な措置は難しいと云う事である。国家権力にはこれ程の強い権限が与えられている訳で、その事を思うとき日本の官憲には果たして周りの目を気にせずに、ロンドンの空港で目の当たりにした強行手段が取れるかどうか。

日本人の資質が問われているようでもある。

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