2008/01/14

新しいCDデッキとオーディオの不思議(その2)

ハイエンド オーディオの機材はアンプにしろレコードデッキにしろ重量がある。そのソニー製SACDデッキは25キロもあった。

パワーアンプなどは50キロを越える物など珍しくない。一人でセッティングなどしているとそれらの機材の移動だけで腰を悪くしかねない。

SACDは確かに良い音ではあったが問題が無いわけではない!第一にソフトの数が少ない。日本ではある程度手に入るソフトがロンドンでは通販を除いてほとんど無理である。HMV等の大きな店でもSACDの売り場などは無い。これは日本も同じ様な状態であるが。それでも自分は日本に行った時にはせっせとSACDのソフトを買って来て聞いていた。

今度のデッキはマランツと言うメーカーだ。学生時代ヤマハビルで見たマッキントッシュやマランツと言う高級アンプに日本製とはどこか違ったデザインの高価な機器になんとも言えない想像をかきたてられたものだ。

これら外国製のアンプを何時か自分でも聞いて見たいと思っていたが、当時の小生にはとても手の届くような値段ではなかった。

何十年も過ぎて知った事はSACDの共同推進者はマランツらしいと言う事だ。マランツは今や日本法人でもある。このメーカーが作ったSACDデッキは英国でも評価は良い。ソニー製の以前のデッキとどの様な違いがあるか興味は尽きなかったが、いざ届いて箱を開けると期待にたがわぬソリッドなデッキが現れた。

最初にリモコンを手に取ったがずっしりと質量感がありデザインも良い、音を聞く前にこの様な感触は嬉しいものである。

今回のデッキは決してハイエンドではないがデザインとしては十分にそれに近い貫禄を持っている。はたして音は?

まず初めにソニーとの比較から普通のCDをかけてみた。澄んだ人工的な色付けのない良い音がした、次はSACDをかけてみた。

マイルスの聞きなれたKind of blueを最初に選んだ。ベースのピチカットの音も切れがいい。マイルスの抜けるようなトランペットとコルトレーンの力強いテナーのコラボレーションが実に見事に表現され息を呑む思いだった。

歴史の浅いSACDではプレーヤーの進歩も発展段階、その進歩は日進月歩10年前のソニーデッキの半額程度の価格帯の物が当時のハイエンド以上の音を出すのだから嬉しくないわけがない。

こうなるともういけない、ヴォーカルはどうかな?とダイアナ クラールのThe look of love声の肉質も良い。次は弓物を聞いてみようとヨーヨーマのKodalyをかけた。チェロなどそうそう聞く事はないが新しい機器が入るとついこの様に得手、不得手を調べるような事をしてしまう。ウーン今度のマランツは良いな!というのが夜明けまでついつい聞き続けた結論だった。

空が明るくなる時間に満足してベッドに潜り込んだが、早くも次の日に又何を聞いてやろうという事を考えているうちに寝てしまった。

考えてみればオーディオ ファイルの単純さはこの様に好きなものに向ったときには他の事が目に入らない。デッキの外観に目をやり中々良い選択だったと自己満足したり、興味の無い者からすれば実に単細胞極まり無い現象であろう。

アンプの時も同じようなものであった。それまでのアンプは日本製のDenonのハイエンド モデルだったのだが、ある時自分の家で真空管のアンプを聞く事になった。

それまでの印象では『たぶん懐古趣味の人が聞くアンプだろうなァ』くらいに考えていたが、自分のスピーカーから出てきた音を聞いて驚いた。それまでのソリッドステートのアンプの半分しか出力の無いアンプが分厚い底力のある音を出したときには耳を疑った。

それからどのアンプが良いか色々聞き比べてみたが結果的にイギリスのEARというアンプに決めた。たった35Wしか出力の出ないシングルエンドのアンプが腰が抜けるのではないかと思うほど重い。ウーハー(低域専用スピーカー)には同じEARの50Wをマルチドライブで使う事にした。

このEARというメーカーは小規模だが会社のオーナーは世界的に有名なアンプ デザイナー Paravicini氏、奥さんは日本人で古くからの小生の知り合いである。

そんな訳でアンプの真空管に掛かるカバーも特別にブリティシュ グリーンにしてもらった。初め懐古趣味的な音と決め付けていた真空管アンプと、最新技術を駆使して作られたスーパー オーディオCDデッキとのコラボレーションが織り成す音は正にオーディオの持つ不思議さを表しているように感じられてならない。

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