2007/11/11

イメージ重視

日本人の外国に対する何らかのイメージが存在することを時々認識することがある。

それは日本で発刊されている本の内容や、外国を紹介するTV番組の映像なども限られた情報を発信していることに気がついたからである。

例えばイギリスの事を紹介した本ではそのほとんどに礼賛本が多く、現実の姿をかなり誇張した部分的なことをステレオタイプのイメージで事実よりも良く紹介する例が多いからである。

それらの著者は日本人でしかもイギリスをよく知っていると自画自賛している人達である。そして極端な例で日本と英国を比較して日本を揶揄したり、英国を礼賛したりと言ったことをよく見かける。英国人が自国の事に誇りを持って良く紹介することは理解できる。しかしながら日本人が薄っぺらな知識で単純に特定の現象や例外的な事柄をとらえ、いかにもその事をして英国が素晴らしく、日本は未熟な社会であるなどと言う決め付けは読んでいても片腹痛い。

『バカも休み休み言え』と小生等は思ってしまう。

しかしよくよく考えてみると英国通を自認する人達がなぜその様な陳腐な英国礼賛を繰り返し書くのであろう。これは日本人の中にこの様な内容の本を好む人達が多いからではないだろうか。別の言い方をすれば正直(正確)な現実だけを取り上げて書いても誰も喜ばないし、そのような本は売れないからであろう。ちょっと落ち着いて考えればどこの国にも日の当る部分と日陰の部分がある事はすぐに分かるはずである。

しかしこれらの本を買って読もうという人にはファンタジー(幻想)の世界を期待して居る人達が多いようで、現実をそのまま紹介したものや日本と共通する問題などには興味が無いのではないかと思われる。

TVでの取り上げ方も本とよく似ている、まず映像として美しいものや珍しいものに偏ることはある程度理解できるが、現実の世界には世界中どこの国でも影の部分は存在する。政治的に関係が上手くいっていない国の取り上げ方を見ればより見えてくると思うが、日本のマスメディアで取り上げられる北朝鮮の映像や情報には否定的な表現が多い。これはメディアにしても国民の感情やテイストを無視することが出来ない為であろう、特に民放等はこの様な傾向がより強く出ることが度々感じられる。

では公共放送を謳うNHKはどうかと言えばドキュメンタリー番組などでは中々見ごたえのある番組にも出会うこともあるが、全体的な印象はやっぱり大多数の日本人の趣向に合わせた番組作りをしていることには変わりない。また英国でも同じ立場となるBBCと比較すると世界に発信する情報のプレゼンス(存在感)に大きな差がある事は残念ながら認めなければならない。

NHKに言わせれば『お金の掛け方が違う』と言うかもしれない。確かに英国では公共放送に対する受信料拒否は許されていない。

不払いが発覚すれば有無を言わせず自動的に罰金となるから徴収漏れは日本より少ないかもしれないが、それだけで番組に対する信頼が上がるとは思われない。日本のメディアが民法そして公共放送を問わず日本人の趣向に合った番組作りをしている以上海外で多くの信頼(支持)を得ることは中々難しい事ではないか。

現在の日本のTV番組の中で世界中に圧倒的なプレゼンスを持っているものが有るとすればそれはアニメーションではないか。

これは世界でもっとも進んだ制作技術を持っており、且つ又日本人が得意とするファンタジーの世界を扱っているからだと思う。

優れた漫画家や製作者が世界でも最も多い国が日本であることは世界中が認めている。しかし残念なことに世界が認めたアニメーション技術の素晴らしさや、世界中に進出しているこれらの作家やプロダクションの日本国内での認識度は今一つ低いのではないか?

日本がいち早くこの分野で成功を収めたプロダクションも現在ではアメリカのウォルト ディズニー社が筆頭株主である。その優れた作品が生み出す巨額の利益を世界で娯楽をビジネスにする巨大企業ウォルト ディズニーが見逃すはずがない。

ここにも日本の社会が持つ自分達の文化に対する認識度が外国よりも低い事が分かるのではないか、外国企業に乗っ取られる前に先に日本国内からこれらの優れたアニメーション作品を認める風潮がおきなかった事を残念に思うのは小生だけだろうか?

アニメーションの趣向も確かにアメリカと日本では異なる。アニメの中で歌や踊りが必ず登場するディズニー作品とストーリー重視の宮崎駿氏の作品には、アメリカ人と日本人のアニメーションに対するテイストの差が見て取れるが、この差こそが実は日本アニメのアイデンティティー(身分証明)なのではないか。外国から認められなければ本物では無いと多くの日本人が考えているとしたら書籍やメディアに限ったことではなく永久に日本人のアイデンティティーは世界で認められる事は無いと思う。

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