2024/03/01

時代と環境の変化を感じるか?

この2回は少林寺拳法と言う武道が目指してきた宗道臣の哲学と近代オリンピック(クーベルタン男爵)の哲学に照準を当ててきた。先のIOCで2028年のロサンゼルスのオリンピック種目にどの様な競技が新しく選ばれたのであろうか、検証してみるのも無駄では無いと思う。

そんな新種目競技の一つにクリケットが有る。
クリケットと言えばイギリスで生まれ現在ではコモンウエルス(commonwealth)を中心とした旧英国の植民地であった国々で幅広く愛されている球技の一つである。残念ながら日本では馴染みの少ないスポーツかも知れない。
しかし世界におけるクリケットの競技人口は野球よりはるかに多いと言われている。野球はアメリカの影響を受けた国々で広まり、クリケットはイギリスの影響が強い国で盛んになった事は事実であろう。イギリスにも野球(baseball)連盟は存在する。しかし残念ながら日本とは逆に幅広くプレーされているスポーツとは言えない。イギリスに限った事では無くヨーロッパの国ではその多くが野球を知らない人達の方が多い事も事実であろう。

そんな中にあって来年のパリオリンピックで新種目に加えられた競技を見てみると、まさしく時代の変化が如実に表れていると感じるのではないか?
東京オリンピックのスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンに加えてブレークダンスである。我々の古い世代のイメージからすれば『これがオリンピック種目?』と首をひねりそうな競技が並んでいる。その様な観点から見ればパリの種目からは外されてしまった『空手』の方が余程世界的な普及度やスポーツと言う観点からもふさわしい様に感じる。

私が英国に来て以来1980年代初めに空手をオリンピック種目にと言う話し合いが持たれた事が有る。81年の夏頃だったように記憶している。
MAC(マーシャルアートコミッション)と言う組織が有り、柔道(すでにオリンピック種目として認知されていた)を除く英国での武道の統括組織であった。当時の予想では空手が柔道に次ぐ武道のオリンピック種目に加わるのではと言う事で、ルールや統一組織の模索が何度もなされた事を覚えている。

その様な中で世界における競技人口が最も多かった空手は次のオリンピック種目としては最有力の武道で有った。しかし結果的には空手がオリンピック競技に選ばれる事は無かった。空手と一括りに相称していた武道だが現実には組織としてはいくつもの団体が有り、それぞれが自分達の団体を中心とした競技ルールを主張して折り合うことが出来なかった事が最も大きな障害であった様に思う。

そんな事実が有り、日本武道で世界中を席巻していた空手(WUKO)はオリンピック競技として認められる大きなチャンスを失う事となり、その後のソウルオリンピックでtaekwondo(テコンドー)が公開競技として認められた事により、はるかに競技人口が多かった空手はオリンピック種目入りが2020年東京大会まで見送られる結果となった事は有名である。先の東京オリンピックの公開競技として公開されたが、来年のパリ大会では消える事になってしまった事は同じ日本の武道に携わる者としては残念な気もする。

柔道も今のIJF(国際柔道連盟)の本部はスイスのローザンヌにあり発祥の地 講道館が有る日本ではない。伝統空手グループは(WUKOからWKF)と名が変わり現在の本部はスペインのマドリッドである。空手のフルコンタクト派はWKAとなり、現在では東京大会を機にWKFルールを受け入れ オリンピックの正式競技として認められるべく共に道を歩き始めている。

この様に見て来ると日本の武道はいずれも発祥の地であるはずの日本に本部が無い事が分かる。ソウルオリンピックで公開競技として始まったテコンドーはすでにオリンピックの公式競技として認められており、同種の競技(武道として)となる空手は正式競技化が難しい事も予測される。一般に区別の難しい(似通った)競技はオリンピックで認められるには余程の違いが見られないと難しいと言われている。

柔道も1964年の東京オリンピックでの公開競技の後、1968年のメキシコ大会では見送られた事が有った。その時柔道のオリンピック入りを強力に推奨した国がイギリスとフランスだった事は有名である。オリンピックもカラーTV放送化に伴い、競技者を見分けやすい国際試合での道着が白とブルーになった事はフランスの国色(ブルー)をオリンピック種目推進の貢献が認められ使い始めたと言うのも頷ける理由であろう。

この様に見てみると日本は武道家に限った事では無く、大局的な視線が乏しく結果的に世界中での発展にも支障をきたす事例は幾つも有る。それでも先に挙げたブレークダンス、スケートボード、スポーツクライミング等 果してこれがスポーツ?と感じるのはやっぱり古い日本人が出てしまったのかと反省する昨今である。

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